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レバンドフスキ、ノイアー達の献身。
バイエルンの凄みと監督のビデオ。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/08/31 11:50
CL優勝メダルとともに満面の笑みのレバンドフスキ。当代ナンバーワンのセンターフォワードであることを証明した。
トゥヘルも脱帽した圧巻のノイアー。
パリSGにも得点チャンスはあった。ネイマールが、ムバッベが、マルキーニョスがあと少しのところまで迫った。だが、そこにはマヌエル・ノイアーがいた。
パリSGのトーマス・トゥヘル監督が思わず、「競争の平等性を壊すんじゃないか」と冗談めかしてコメントするほどの圧巻のパフォーマンスだった。
「ノイアーはGKのプレーを別次元のレベルに押し上げた。我々にとってはありがたくないタイミングでトップフォームの状態になっていたよ」
トゥヘル監督はこうも話し、脱帽していた。
バイエルン取締役で自身もGKとしてCL優勝を果たしているオリバー・カーンは「あれこそがバイエルンのGKができなければならないことなんだ」とし、自身の後継者に最大限の敬意を表していた。
フリック監督が試合前に見せたビデオ。
そして、プロ監督としてのデビューシーズンで3冠を達成したフリック監督こそが最大の発見であり、最大の勝者ではないだろうか。
1997、1999、2001年にCL決勝に進み、2度優勝した名将オットマール・ヒッツフェルトは「フリックはいつでも冷静で、論理的だ。文字通りチームのヘッドであり、心構えを植え付けた。大事なのは特別なことをしないということだ。シンプルなものほどベストなのだ」と称賛していたが、大事な試合前、フリック監督は選手にどんなメッセージを送ったのか。
ミュラーが試合後に明かしている。
「試合前にビデオを見たんだ。僕たちの奥さんや家族からの応援メッセージのビデオだ。あれでもう、いろんなことがガチっとはまったね」
愛する人たちのために。テレビの向こうで声援を送ってくれるファンのために。そして自分が渇望し続けた頂点に立つために。燃え上がらないわけがない。
「バイエルンはここからさらに発展していくための土台を築き上げた」
ヒッツフェルトはそう評価した。終わりではなく、始まり。
バイエルンの黄金時代が到来するかもしれない。