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レバンドフスキ、ノイアー達の献身。
バイエルンの凄みと監督のビデオ。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/08/31 11:50
CL優勝メダルとともに満面の笑みのレバンドフスキ。当代ナンバーワンのセンターフォワードであることを証明した。
ビッグイヤーとともに寝るレバ。
相手GKへ猛ダッシュでプレスをかける。身体を張ってボールを収め、味方を鼓舞し、走っていく。この日、持ち前の鋭い動き出しで得点機を演出したが、得点を奪うことはできなかった。
しかし、大事なのは自身の得点ではない。
翌朝、優勝トロフィーと一緒に寝るレバンドフスキの写真が『ビルト』紙に載っていた。子供のように無邪気な笑顔を浮かべ、心からの満足感を隠そうとせずに。悲願成就した男に相応しい写真だと思った。
ピッチ上のコーチとなったミュラー。
クラブ生え抜きのトーマス・ミュラーは「気持ち的にはどん底から這い上がってきた感じだよ。あそこからの上り方は本当にセンセーショナルだったね」と振り返っていたが、紛れもない本心だろう。
ドイツ代表から今後は招集しないと伝えられて、ニコ・コバチ前監督のもとではベンチ生活が続いた。それでも主力として地位を取り戻し、ハンジ・フリック監督の信頼を受け、リーダーとしてチームをけん引するようになった。
実際、ピッチ上のコーチとも呼ばれていたミュラーが果たした役割は大きい。
CL準決勝リヨン戦、決勝のパリSG戦こそ目立った活躍は見せられなかった。物足りなさを感じた人もいるだろうし、専門誌の採点でも最高点の部類には入らない。でも、あの日も存在感は絶大だった。
攻守にどれだけ走ったことか。ただ走っていたわけではない。全速力に近いスピードで守備ラインの裏やペナルティーエリア内に飛び込み、足を止めずまた走り出す。敵陣ペナルティーエリア付近で相手CBキンペンベにプレスをかけ、そこで奪い切れずに前線まで運ばれた時も、突破を図ろうとしたムバッベやネイマールにチャージをかけたのはミュラーだった。
自分の役割を次のように語っていたことがある。
「プロ選手になったばかりの頃はゴール数で自分のプレーを測っていたりしたよ。でも年を重ねるごとにチームの中で責任を担って、チームのためのプレーを大事にするようになってきたと思う。ゴールを狙うだけではなく、相手のカウンターを防ぐためにすぐに汗をかいて守備をするとかね。ピッチに立っている限り、僕はどんな試合でも勝ちたいし、そのための仕事を探してプレーしている」