プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミア“真夏の移籍市場”が熱い!
マンUが狙うサンチョ、クリバリー。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/08/19 11:50
ドルトムントで一躍名を上げたサンチョ。復権を期す“赤い悪魔”の一員となるか、移籍市場動向から目が離せない。
アーセナルは異例のベテラン戦略。
トッテナムと同じ北ロンドンでは、アーセナルが異例の動きで注目されている。
転売による利益が見込めない30代選手に関し、出来高制の1年契約を採用した先駆者が、31歳のピエール・エメリク・オーバメヤンを年俸アップの新契約で引き留め、チェルシーとの契約が切れた32歳のウィリアンを3年契約で獲得した。
前者には1300万ポンド(約18.2億円)、後者には520万ポンド(約7.3億円)の年俸を支払う好待遇には、巷で「狂気の沙汰」との声もある。
とはいえ、個人的には理に適っていると理解している。
FAカップ優勝でEL出場権を得たものの、4年連続でCLに届かない今季8位。この結果に監督と選手の大半、そして経営陣も給与カットを受け入れている。タイトルを獲得した翌週には、プレミアで初となるスタッフ55名の大幅な人員削減の意向も発表された。
そんな中でチーム戦力に投資するなら、従来にも増して早期のリターンが求められるが、来季末で契約が満了するオーバメヤンに匹敵するゴールを確約する代役を見つけることは困難を極める。あのティエリ・アンリよりも4試合少ない79試合で、プレミア通算得点を50点台に乗せた決定力に、いきなり陰りが見られるはずもない。
監督として初めてフルシーズンに挑戦するアルテタが、「経験値と勝者のメンタリティの持ち主」と推すウィリアンに関しても同様だ。
チェルシーが拒んだ本人希望の3年契約を飲む格好になるが、リーグ戦36試合に出場して自己最多の9ゴールを決めた今季が示すように、攻撃面での切れ味も守備面での献身性も衰えないウインガーが、少なくともあと2年、パフォーマンス・レベルを維持することができれば、十分な費用対効果をもたらすことになるだろう。
実はベルカンプ獲得の時も……。
アーセナルは、以前にも不況下での意外な動きで移籍市場の話題をさらったことがある。1995年6月、移籍金750万ポンド(約10.5億円)でのデニス・ベルカンプ獲得だ。深刻な不況で始まった'90年代半ば、まだ失業率が8%を超えていた夏に、アーセナルは3倍増で移籍金のクラブ史上最高額を更新する補強を敢行したのだった。
その後の黄金期到来は、翌年のアーセン・ベンゲル監督就任に負うところが大きいが、'98年の7年ぶりのリーグ優勝から2004年のリーグ無敗優勝まで、ベルカンプがキーマンの1人であったことは間違いない。
あの夏から25年、やはり不況到来を政府が認めている今夏も、移籍市場での様々な積極姿勢が最終的に功を奏するかもしれない。