話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
部員6人なのにコンサドーレと提携。
クラーク高と伊藤壇の夢は3年でIH。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byShun Sato
posted2020/07/30 07:00
今はまだ豪華な設備に不釣り合いな人数だが、そのギャップは遠からず埋まることだろう。
1年間ほぼ運動していなかった生徒も。
また、伊藤監督は「出口教育」を重視している。
「僕が監督として呼ばれた理由のひとつは、アフターケアができることだと思っています。力のある選手がプロを目指す時にいろんな選択肢があると思いますが、例えばアジアのクラブに紹介することも可能です。実際、僕はこれまで100名以上の選手をアジアのクラブに紹介してきています。
もちろんプロだけではなく、大学、社会人サッカーについても僕の人脈で生徒の進路に役立てることがあると思っていますし、その行先をしっかりと生徒と話をしていきたい。僕は、高校サッカーは3年間の付き合いだけじゃないと思っています。高校を卒業して大学生、社会人になってもぷらっと遊びにきてくれるような関係性を作っていきたいんです」
現在のサッカー部員たちは、ニュースでサッカー部創設を知って入部してきたり、元々コンサドーレのサポーターだったり、バックグラウンドはさまざまだ。伊藤監督は、最初のオリエンテーションをZoomで行った時、サッカー歴や週にどのくらい身体を動かしているかなどの質問をしたが、彼らの返答はかなりユニークだったという。
「いやー、すごかったです。1年間ほとんど何もしていませんとか、Round1に行っていますとか……。eスポーツやっていますというのもあったけど、それってテレビゲームだろって(苦笑)。そういうレベルでしたね」
マンガのようだが、そうしてチームがスタートした。
初心者に経験者が教える部活っぽさ。
練習は週5~6日。土日は、伊藤監督の友人の社会人に交じって練習試合に参加している。
現在、6名の部員のポジションは、GK1人、ボランチ3人、センターバック1人、1年生の初心者が1人だ。初心者の選手は練習中、ロングキックの蹴り方をGKから教えてもらっていた。なんとなくほのぼのした雰囲気が漂い、「部活動」という感じがして微笑ましい。
昔は、こういうシーンが当たり前にあったが、最近の部活動はうまい選手たちだけのクラブ活動になっている学校も多い。
他の練習に移っても、GKは1年生の初心者に蹴り方を身振り手振りで教え、伊藤監督はそれを黙ってみていた。