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中田vs.名波の大雨、ドイツW杯決勝。
セリエAダイジェストの神髄とドラマ。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2020/07/20 07:05
“欧州日本人対決”の先駆けとなったペルージャ中田vs.ヴェネチア名波の対決。フジテレビでの中継を凝視したファンも多いだろう。
ユーべ戦伝説のゴールと番組復活。
'98年9月13日に行われたセリエAの開幕戦、ペルージャに加入したばかりの中田は雨のスタディオ・レナト・クーリで前年王者のユベントスに2ゴールを叩き込み、センセーショナルなデビューを飾ってみせる。
'94-95シーズンにカズの出場試合をミランとの開幕戦の1試合しか中継できなかったフジテレビは'98-99シーズン、このユベントス戦を含めて中田の出場試合を11試合、翌'99-00シーズンには18試合も中継することになる。
こうして、中田のセリエA移籍に合わせて『セリエAダイジェスト』は復活した。以前に2年間放送していたため、番組スタッフの経験値は高まっていた。ナレーション原稿を執筆する加部究の筆も以前に増して軽快で、ナレーション担当の青嶋達也も遊び心をさらに上乗せして喋った。例えば、こんな具合に――。
アンドリュー・シェフチェンコの「ハラーショ、ハラーショ」
ハカン・シュクールの「いやん、はかん、シュクール」
アンジェロ・ディ・リービオの「顔で笑って心で泣いて、おいちゃんディ・リービオ」
ブレシアのカルロ・マッツォーネ監督の「ロビ~、頼む~」
アタランタのジョバンニ・ババッソーリ監督の「ジィジィじゃない」
ビエリの「ウォ~」に感情が?
青嶋がいたずらっ子のような表情で、振り返る。
「クリスティアン・ビエリの『ウォ~』の雄叫びなんて、加部さんも『泣いてる感じのウォ~』とか『怒ってる感じのウォ~』としか書いてこないんですから(笑)」
サッカーを取り巻く環境も2年前とは大きく変わっていた。村社が証言する。
「2002年に日韓W杯が開催されるのも決まっていた。カズの頃はまだ野球文化だったんだけど、ヒデの時代には『プロ野球ニュース』が終わり『すぽると!』がスタートしていて、月曜日は完全にサッカーの日になった。局全体でサッカーに対する理解が増して、サッカー番組にお金をかけられるようになって、人海戦術も採れるようになった。だからカズの頃とヒデの頃とでは、番組のイメージもずいぶん違うはずですよ」