スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
宿敵バルサファンが棺桶を用意!?
5度目降格エスパニョールの悲哀。
posted2020/07/21 11:30
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Getty Images
よく晴れた日曜日の昼、久々にコルネジャを訪れた。
メトロ5番線の終点駅を出て、屋台が並ぶ小さな広場を抜ける。そして長く緩やかな下り坂を歩いていく馴染みのルートで到着したRCDEスタジアムの周辺は、これから試合が行われるとは思えないほど、のどかな雰囲気に包まれていた。
7月12日、エスパニョール対エイバル。
この試合の4日前、エスパニョールは27年ぶり史上5度目のセグンダ降格を決めていた。それもカンプノウで宿敵バルサに引導を渡されるという、最悪の形で。
ダービー当日、カンプノウ周辺には「HOY PUEDE SER UN GRAN DIA(今日は素晴らしい日になりそうだ)」と書かれた横断幕が張られ、バルサが先制点を決めた後にはスタジアムの外で花火が打ち上がった。集まったクレたちは手作りの棺桶まで用意し、隣人の“死”を悔やみ合ったという。
とにかく不憫なのはファンだ。
エスパニョールにとってせめてもの救いは、試合が無観客で行われたことだ。そうでなければカンプノウのスタンドでは幾度となく「ア・セグンダ・オーエー!」といった無情なチャントが繰り返されていたことだろう。
ペリコにとってこれ以上の屈辱はない。この結果を招いた当事者である選手たちは仕方ないとして、不憫なのはファンだ。
勝てなければ降格が決まる崖っぷちの一戦は、勝てばわずかながらも希望をつなげるだけでなく、宿敵から逆転優勝の望みを奪える一戦でもあった。シーズンを通して苦しみ続けてきたペリコたちは、きっと最後にして最大のモチベーションで観戦に臨んだに違いない。
そんな彼らに突きつけられた現実は、この上なく酷なものだった。
とはいえ試合後の会見でキケ・セティエンも言っていた通り、エスパニョールの降格はこの1試合で決まったわけではない。