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ラグビーW杯、日本×南アフリカ。
「何回でも泣ける」熱狂の日の記録。
text by
村上晃一Koichi Murakami
photograph byAFLO
posted2020/06/30 19:00
カーン・ヘスケスの歴史的トライ。ジャパンウェイが結実した瞬間だった。
実況者も警備員も、皆が熱狂した。
南アの渾身の押しに耐えてボールを確保した日本は、リーチ、真壁伸弥らがボールを抱えて次々に突進。ゴールラインまではあと5mだ。右タッチライン際から今度は左オープンヘ。日和佐の横に囮として五郎丸が縦に走り込む。「俺に放るな~」と心の中で叫びながら。この動きで南アの防御が少し止まった。左タッチライン際にスペースができる。日和佐からパスを受けた立川は、アマナキ・レレイ・マフィへロングパス。そしてボールはカーン・ヘスケスへ。左コーナーぎりぎりにヘスケスが飛び込むと、会場は異様な興奮状態に包まれた。
テレビの放送席では実況者が絶叫し、警備員、ボランティア、記者も総立ちになった。その場にいた人々が目撃したのは、ラグビー史上最大のアップセットだった。
80分間体をぶつけ合うラグビーに「まぐれ」はない。最後まで走りぬいたフィットネスは最大の勝因だが、ミス、反則を最小限にとどめた規律、緻密な戦略、そして勇気ある決断と、その戦いぶりも特筆すべきものだった。
「何回でも泣ける」。最優秀選手に選ばれた田中史朗が泣きじゃくる。その言葉は、日本ラグビーを愛する人々の気持ちを代弁しているようだった。ラグビーの枠を超え、世界中の人々に勇気を与えた「ブライトンの衝撃」は、ラグビーという競技が続く限り、永遠に語り継がれる。
(Sports Graphic Number 2015年10月23日臨時増刊号より)