プロ野球亭日乗BACK NUMBER
おバカキャラでも球場では常に正装。
元木大介が持つ指導者の資質と財産。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/06/01 20:00
昨季、一軍の内野守備兼打撃コーチに就任し、三塁ベースコーチも務めた元木大介。今季はヘッドコーチの重責を担う。
勉強して“クセ者”への道を切り開いた。
「マシンで打撃練習をするんだけど、一番、嫌だったのはファウルチップを打つこと。打ち終わるとジミーと2人でボールを拾いにいくけど、ファウルチップを打つと後ろにも取りに行かなくちゃならないから。必死に前に飛ばそうとコンタクトしていましたよ」
そうして晴れて'90年のドラフトでは1位指名で憧れのユニフォームに袖を通した。ただ、翌年のキャンプでグラウンドに立つと、1年のブランクで選手としての何かを失っていることに元木は気づいたという。
「悔いはない。ただ、1つだけあるとすれば、野球のレベルが落ちたことかな。プロに入ったとき『オレ、もう少しできたよね、高校時代に』って思った」
だから生き残るために必死に考え、野球を勉強して“クセ者”への道を切り開いた。それが逆に、14年間、第一線でプレーを続ける原動力となった。
そしてユニフォームを脱いで、そこからまた14年の時を経た現場復帰。おバカキャラと言われたタレント活動で磨き上げたコミュニケーション能力はモチベーターとしてのコーチの仕事を支えている。そしてグラウンドではずっと正装で野球と真正面から向き合って来た。
そうして過ごした月日は、指導者・元木大介にとっては、他の人にはない財産となっているということだ。