プロ野球亭日乗BACK NUMBER
おバカキャラでも球場では常に正装。
元木大介が持つ指導者の資質と財産。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/06/01 20:00
昨季、一軍の内野守備兼打撃コーチに就任し、三塁ベースコーチも務めた元木大介。今季はヘッドコーチの重責を担う。
「僕にとって野球場は全く違う場所なんです」
「タレントとしてテレビに出させてもらっているときには、それに見合った仕事の服装ってあると思うんです。だから少しラフな格好でも、それは手を抜いたり、雑になっているのではなく、それが仕事と向き合っているということ。
ただ、僕にとって野球場は全く違う場所なんです。だから野球の仕事のときは必ずネクタイを締めていくって、自分で決めているんです」
たかが服装である。されど服装だ。
自分がどう野球に向き合っていくか。背広にネクタイという正装に込めた、元木コーチの思いがそこには込められていた。
どんなおバカキャラを演じて(?)いても、自分の本籍は野球にある。グラウンドで見せていた背広姿には、その思いがずっと込められていたのである。
「コーチにして本当によかったと思う」
「コーチにして本当によかったと思う。素晴らしい統率力、洞察力。野球の技術に対する見識、知識、戦略眼もある。1年間、ユニフォームを経験して、さらにいい指導者になるという確信があるから、ヘッドコーチをやってもらうことにした」
今季からはヘッドコーチとしてチーム全体に目配りをすることになったが、その抜擢理由を原辰徳監督に聞いたときの答えだった。
甲子園を沸かせた上宮高校3年生の1989年のドラフトでは巨人入りの夢が破れた。翌'90年はハワイで自主トレをしながら、巨人からの指名を待った。
「ハワイに渡ってしばらくすると、面倒を見てくれていた日本人のコーチも帰ってしまって、本職は大工のジミーという人を相手に毎日、河川敷みたいな球場で練習をしていた」
そのころの話を聞いたことがある。