プロ野球亭日乗BACK NUMBER
おバカキャラでも球場では常に正装。
元木大介が持つ指導者の資質と財産。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/06/01 20:00
昨季、一軍の内野守備兼打撃コーチに就任し、三塁ベースコーチも務めた元木大介。今季はヘッドコーチの重責を担う。
もう1人の元木大介の姿があった。
ただ、その一方で、そうやってタレント活動をしている真っ最中にも、もう1人の元木大介の姿があったことをきちっと書いておかなければならないだろう。
元木コーチは現役引退後、タレント活動と並行して、主にラジオの巨人戦中継や新聞で解説の仕事をしていた。
ただ、引退後は2009年から出演し始めた「クイズ!ヘキサゴンII」や'10年に御徒町にオープンしたラーメン店の経営などが話題で、解説や評論の内容が話題となるようなこともほとんどなかった。
周囲から見るとタレント業が主で野球の仕事はその片手間でこなしているように映ったのも仕方なかったかもしれない。
ただそうやって解説の仕事で東京ドームを訪れるときの元木コーチは、常に背広にネクタイという“正装”でグラウンドに立っていたのである。
「それだけは自分の中で決めているんですよ」
多くの解説者は画面に映るテレビ中継の時には、背広にネクタイ姿という正装で球場を訪れる。
ところが画面に映らないラジオ中継や新聞の仕事のときには、ノーネクタイが当たり前、ラフなポロシャツ姿でグラウンドにやってくるのもごく普通のドレスコードなのである。
ところが元木コーチは、ラジオの仕事でも、新聞の仕事でも、頑なに球場を訪れるときにはネクタイに背広姿でやって来た。
「いつもネクタイ締めてパリッとしているね」
球場でこう声をかけたことがある。
すると元木コーチは「それだけは自分の中で決めているんですよ」と、こんな思いを話してくれた。