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小野、高原、稲本を追う日々の終焉。
ドキュメンタリー番組の終わり方。 

text by

佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byFuji Television

posted2020/04/29 11:55

小野、高原、稲本を追う日々の終焉。ドキュメンタリー番組の終わり方。<Number Web> photograph by Fuji Television

小野、高原、稲本とともに写真に収まる能智氏。彼もまた黄金世代の「同志」の1人なのかもしれない。

初めて実現した3人での鼎談。

――ちなみに取材中、3人と衝突することはなかったですか。

「シンジは会うといつも笑顔で話をしてくれるので問題なかったですし、タカは毎回、緊張感があり、顔色をうかがいながらでしたけど、やっていく中では問題なかった。イナは、昨シーズン後半は試合に出場する機会が減ってしまったのでストレスが溜まっていたかなぁ。

『またしゃべるんですか、試合出てないし』って徐々に不機嫌モードになり、最後の方は『もう取材はええでしょ』って感じになった。多少ギクシャクしたけど、ドキュメンタリー番組ですから、辛いことも聞いていかなきゃいけないことは、イナも分かってくれていたと思っています。最後は3人一緒に出てもらったんで、ホッとしました」

 不思議なことに、この番組は何回観ても飽きない。名画座の映画のように、長く楽しめる作品になっている。そして、今回の最終章には、エピソード1から6までと違うエンディングが用意されていた。3人が一堂に介するシーンが映し出されるのだ。

――最後の3人のトークは初めてでしたね。

「過去エピソード6まで制作した中で、3人が同じフレームに入って取材したことが1度もなかったんですよ。『ドイツワールドカップの後は3人でやろうや』ってイナが番組の中で言っていて、実際に2006年の最後に3人を集めて鼎談をやろうとしたんですが、ワールドカップで結果が出なかったこともあり、やらなかった。

 だから、最終章では絶対に3人を集めて鼎談をやりたいと思っていました。昨年末の同じ頃、他社さんからの同じオファーがあったようだけど、タカがウチを選んでくれたと聞きました(笑)。彼らも『3人で取材を受けるのは初めて』って言っていたんで実現して本当に嬉しかったですし、感無量でした」

入れられなかった稲本の吐露。

――使いたかったけど、最終的にカットしたシーンはありましたか。

「イナの誕生日の日のインタビューで『40歳になったけど、これからどういうサッカープレイヤーを目指す?』って聞いたんですよ。イナは『ヤット(遠藤保仁)とかシンジと違って自分の勢いやフィジカルでやっていくプレーは長く出来るスタイルじゃない。しっかりした技術でプレーしてきた2人と違ってオレには何もない感じがする』って言ったんです。

 最初はこの部分を入れて話を展開していきたいと思っていたんですけど、そのためには遠藤やシンジ、イナのプレースタイルを説明しないといけない。するとかなりサッカー寄りになってしまう。増本に『それをやると人間模様を表現する尺がどんどんなくなりますよ』といわれて、残念ながら構想外になりました」

【次ページ】 「死ぬ前に作れて良かったという安堵感」

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