話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
小野、高原、稲本を追う日々の終焉。
ドキュメンタリー番組の終わり方。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byFuji Television
posted2020/04/29 11:55
小野、高原、稲本とともに写真に収まる能智氏。彼もまた黄金世代の「同志」の1人なのかもしれない。
3人に教えられ、与えられたもの。
――今は、めぐる冒険のような作品作りが難しい時代ですか。
「自分次第。やる気、熱意、そして覚悟の問題だと思いますね。今回も撮影含めて自分1人で仕切ってやれることにワクワクしたし、すごく楽しかった。自分の脚と感覚で取材をして、200時間以上の映像をたったの2時間、1%に満たない尺になりましたが、最後に『これだ』という番組を作ることができて幸せでした。そういう作品作りを楽しめるかどうか。
それには取材対象者との関係性もあると思います。そういう人生の真剣勝負の経験をさせてくれたシンジ、タカ、イナの3人には感謝しかないですね。番組作りのチャンスをくれて、わざわざ時間を割いて対応してくれた。なにより能智という人間を受け入れてくれた。19年間、3人には勉強させてもらったし、僕の方が成長させてもらいました。本当にありがとうという気持ちでいっぱいです」
放送後すぐに、以前、一緒に仕事した木梨憲武氏からメールが届いた。
「20年の密着取材サイコー!NHKよりスゴいわー。素晴らしい4人組の物語」
たぶん、木梨氏の目には能智氏が家主で、子供のような3人がゴタゴタを起こし、成長していく『北の国から』のような物語に見えたのだろう。能智氏の思いを受け止めてくれた木梨氏の短い携帯メッセージは、何よりもうれしい褒め言葉だった。
(【前編】小野、高原、稲本を撮り続けた男。フジテレビ能智氏が捧げた19年間。 を読む)