プレミアリーグの時間BACK NUMBER
シティが抱えるアグエロ後任問題。
最適解はマンU有力のケイン強奪か。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/04/20 11:40
トッテナムの大エースであるケイン。果たして新シーズンの選択肢は残留か、いずれかのマンチェスターか?
デブライネのラストパスが来たら。
ケインはチャンスメイクに積極的なストライカーである。シティの前線アウトサイドでレギュラーを張るラヒーム・スターリングが、イングランド代表でもネットを揺らす頻度が高まった背景には、ビルドアップに絡んで周囲を生かす「代表エース・ケイン」の存在もある。
プレミアリーグの公式記録を見れば、昨季ケインが創出したビッグチャンスは、トッテナムで3番目の7回。だが、この数字はシティではチーム6位タイでしかない。それだけシティはチャンス供給力で勝る環境なのだ。
「デブライネからラストパスが来るなんて想像しただけでもたまらない!」と声を揃えていたのは、ガリー・リネカー、アラン・シアラー、イアン・ライトだ。
リーグ日程延期の翌週からBBCで始まった、プレミア歴代トップ10を選ぶ『マッチ・オブ・ザ・デー・ポッドキャスト』でゴール・スコアラーがテーマだった週に、彼ら自身が今日のシティにいたら得点数は増えていたという意味での発言だった。
往年の名ストライカーたちが涎を垂らしそうな勢いで羨ましがった環境――そこにケインが身を置くことになれば、同番組で1位に選ばれたシアラーが持つ通算260得点のプレミア歴代最多記録の更新すら夢ではないような気がする。
イングランド代表主将としての力も。
シティかユナイテッドかにかかわらず、破格の移籍金を要するケイン獲得に懐疑的な向きは、理由として故障歴を挙げるのだろう。だが8年前に、やはりタイトル獲得のチャンスを求めてアーセナルを出たファンペルシにも怪我の不安があった。
それでも移籍1年目にユナイテッドをプレミア王座奪回に導くゴールを重ねて、自身初のリーグ優勝を経験している。
ケインは当時29歳だったファンペルシより若く、ピーク年齢の入り口に立とうとしているところだ。シティとしては、失敗が続いた今季途中にグアルディオラが冗談混じりにGKエデルソンの抜擢をほのめかしたPKキッカー問題の解決策にもなる。
トッテナムと代表でキャプテンマークを付けるセンターフォワードは、リーダーシップ発揮も計算できる。イングランド主将のネームバリューは商業面でも大きなプラス効果が見込める。シティ経営陣が2億ポンドでも「ペイする」と判断しても不思議ではない。