フランス・フットボール通信BACK NUMBER
差別と戦ったミーガン・ラピノー。
女子バロンドールの闘士の素顔とは?
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph byBenjamin Schmuck/L'Equipe
posted2020/03/22 11:50
アメリカ・シアトルの街での取材。トロフィーと共にインタビューに応じてくれたミーガン・ラピノー。
アメリカという国が持っている妄想とは?
――ドナルド・トランプをはじめ、あなたの存在を苦々しく感じているひとたちを黙らせるためでもあったのですか?
「もちろんそれはあった。
アメリカという国は、自分たちが常に世界最高で世界を支配しなければならないという妄想にとりつかれている。ときにそれは過剰なほどで、ゾッとすることすらある。
でも私たちの場合は、勝利がアメリカだけでなく世界の女子サッカーを大きく前進させた。世界チャンピオンのタイトルが、平等を求める私たちの戦いを、さらなる次元へと導いてくれた。だから私はこのバロンドールを、チームメイトやコーチ、家族、友人たちやスーだけに捧げるのではないと思っている」
――では他の誰に捧げるのでしょうか?
「周辺に追いやられていると感じているすべての人々、自分に関心を払われていないと感じている人々、戦っている人々に捧げたい。たぶんこのアメリカ代表が――もちろん私もそうだけれども――彼らに新しい道を切り開いた。
旧弊な秩序を破壊し、それぞれにとってよりよい世界を作り出すことを可能にした。自分のための主張をしっかりしようとする人々にとって、私はシンボルなのだろうと思う。
だから自分が本当に何を求めているのかを深く掘り下げるのを止めるつもりはないし、自分の可能性に限界を置くつもりもない」
すべての差別を受けている人たちのために。
――その「周辺に追いやられていると感じているすべての人々」とは誰のことですか?
「分け隔てなくすべての人々に対して。
人種差別に苦しむ若いアフリカ系の人々や世間の冷笑を浴びているデビューしたての女子サッカー選手、同性愛者のアスリートたち、男性の同僚と同じサラリーを貰う価値のある女性オフィスワーカー……。彼らの問題は通底しているし、自分の望む人生を送りたがっている。
世界は私たちの周辺から変化し始めている。香港、チリ、レバノン、アルジェリア、黄色いベストを着たフランスの人たち……世界中で人々が主張をはじめている。
私はアメリカ代表チームともう何年も世界を回っている。多くの試合に勝ちスペクタクルを提供しているけど、そうした人々の期待には常に応えるようにしている。私自身も私に近づいてくる人の言葉をよく聞くようにしている」