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アマ球界の王道投手を変えたSNS。
ダル、お股ニキとの出会いと起業。
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byTakeshi Shimizu
posted2020/03/15 20:00
自ら率先してコーチングする内田聖人。アマ球界の王道を歩んだ選手が新たな取り組みをしている。
有給休暇で米独立Lのトライアウト。
そんなタイミングで“ストラテジスト(戦略家)”という肩書を持つ、池田則仁氏と知り合う。プロ野球選手20人にスローイング、バッティングを個人的に指導している、パーソナルコーチだ。彼に教えを請うと、その指導がマッチしてスピードが上がっていった。
また、現役時代から通う治療院の医師もアメリカで学びシカゴ・カブスのダルビッシュ有投手のケアを担当したこともある先進的な施術の持ち主である。これらの人に支えられ、自主トレを積み重ねると球速は最速150キロまで出るようになった。
とはいえ、ここ何年か真剣勝負の場で右腕を満足に振り切っていない。活路を海外に求めた。
2019年2月、有給休暇を取ってアメリカの独立リーグのトライアウトを受ける。そして2Aレベルという独立リーグの1つ、キャナムリーグのニュージャージー・ジャッカルズの入団が決まる。
退路を断ち、ENEOSを退社する。正式に6月1日に渡米して合流。しかし、2試合に登板したが結果が出せず、不運もあったがあっという間、6月20日には解雇された。
7月、米国内や台湾プロ野球から入団テストの話もあったが、最終的にはまとまらない。飢餓感は癒されていない。8月、セントルイスのピッチングを専門に指導する野球アカデミー、「P3」の門を叩いた。メジャーに昇格する選手が巣立っていて注目される学校だ。内田はそこで最先端のトレーニングメニューに触れる。2カ月間の単独武者修行。自身を見つめる機会になった。
「とどまることをしない、なんでもトライしてみないと気が済まないんです」
道のたどり着く先はわからない、どう続いていくか面白いものだ。好奇心旺盛な性格はSNS時代、という今の風にも合った。
失礼は承知でダルにツイッターのDM。
ツイッターを見ているとダルビッシュ有投手が、シカゴ近辺の独立リーグの日本人選手を自宅に招いているという。
「参加させていただけませんか」
失礼は百も承知でダイレクトメールを送ると、快諾された。ダルビッシュと一緒に練習する機会を得て、カブスの本拠地リグレー・フィールドのブルペンでピッチングを見てもらえた。高速スライダーの投げ方も教わった。
「ダルビッシュさんは上手くなるために常日頃から本気で考えている人。尊敬しかない。インプット、勉強することばかりでした」
ダルビッシュが用意してくれたホテルに泊まり、技術とメンタルの蓄えは4日間の滞在中に何十倍にもなった。