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無敵リバプール攻略法を編み出せ。
ペップはSB封じ、シメオネは……。
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2020/03/11 11:30
CL決勝トーナメント1回戦第1レグでリバプールを完封したアトレティコ。敵地での再現を狙う。
ペップのマンCは“ゲーゲンプレス”。
まずは今季、リバプールの最大のライバルと目されていたマンチェスター・シティだ。
現在2位のリーグ戦では25ポイント差をつけられている。加えてフィナンシャル・フェアプレー違反で来季から2シーズン、UEFA主催の国際大会から締め出される可能性もあるなど、チーム状況も明暗がくっきりだ。
この2チームが対戦したのは2019年11月10日のプレミアリーグ第12節。この試合はホームのリバプールが3-1で勝利した。攻守の切り替えが早い両者による目まぐるしい展開だったが、この試合の命運を分けたのはシティのプレッシングだった。
この試合、ジョゼップ・グアルディオラ率いるチームは、計算され尽くした素早いパス回しでリバプールを翻弄した。試合終了時のボールポゼッションも55%で相手を上回っている。
一方で守備に回った際には、前線からの激しい“ゲーゲンプレス”を仕掛けたのだ。これは昨季からパワーアップしたポイントのひとつで、相手に後方でのパス回しですら余裕を与えないプレッシングスタイルは、本家クロップ監督のそれに引けを取らないほど、日を追うごとに完成度が増している。それをリバプール相手に敢行したのだ。
両SBの攻め上がりを抑制したが。
これによってリバプールは、普段はラインを高く保つ両サイドバックのアレクサンダー=アーノルド、ロバートソンが迂闊に攻撃参加ができなくなった。これはペップの狙い通りだったに違いない。
3失点したとはいえ、先制点となったファビーニョのミドルシュートはマネの仕掛けから、3点目のマネのヘディングはヘンダーソンのクロスから。また、サラーが挙げた2点目のアシストはロバートソンだが、敵陣深くまでは行かずにアーリークロスだった。
レッズの両サイドバックを警戒し、彼らに高い位置でボールに関与させない――そこだけを見れば対策は見事にハマっていた。しかしこれが攻撃、つまり自らがボールを握っているときに、大きな副作用をもたらすことになる。
サイドバックの2人が攻撃参加に慎重になったことで、シティにとっては、両サイドバック裏のスペースがなくなった。攻撃を仕掛けても常に相手の4バックが揃っている状態だったのだ。
いくらポゼッションサッカーの至高、マンチェスター・シティといえど、万全の態勢を敷いたリバプールの守備網、ましてやアンフィールドでそれを崩すのは至難の業だ。終盤に1点を返したものの万事休す。リバプール必殺のカウンターを止めるための“ゲーゲンプレス”だったのだろうが、結局はそれが諸刃の剣となった試合だ。