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無敵リバプール攻略法を編み出せ。
ペップはSB封じ、シメオネは……。
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2020/03/11 11:30
CL決勝トーナメント1回戦第1レグでリバプールを完封したアトレティコ。敵地での再現を狙う。
シメオネが講じた両ウイング封じ。
アトレティコは開始4分で、セットプレーから運よく先制した。そしてその後のほとんどの時間で、守りに徹することを選択したのだ。こと守備に関しては、シメオネは”スペシャリスト”といってもいい存在である。ではどのようにリバプールの攻撃を封じたのか。
ポイントはマネとサラーの両翼、彼らを自由にさせないことだ。オーソドックスな4-4-2のシステムで挑んだアトレティコは、レナン・ロディとシメ・ブルサリコの両サイドバックが、裏のスペースへの走り込みに対する感度を非常に高く保った。
それに加えてトマス・ルマーとコケの両サイドハーフも精力的に守備に加わったことで、リヴァプールにサイドの高い位置で数的優位を作らせなかった。
ペップのように、リバプールの攻撃の要となる「サイド」を封じる対策を講じたのは同じだが、シメオネはより自陣の深い位置、レッズの両サイドバックではなく両ウイングへの対策に重きを置き、ゴール前で仕事をさせないということに特化した戦術を選んだ。
なおこの日のアトレティコが攻勢をかけたのは序盤のみで、十八番のショートカウンターでもあまり人数をかけなかった。それはある数字からも浮かび上がる。
英サッカー分析メディア『WhoScored.com』によると、アトレティコのシュート7本のうち5本がペナルティボックス外から放たれたもの。自らがボールを保持している時間帯さえ、守備を重視していたのだ。
アトレティコ全員の強い守備意識により、リバプールは敵陣で自由にさせてもらえず。シュート8本を放つも、枠内に飛ばすことはなかった。ファン・ダイクが『BTスポーツ』のインタビューに「これが彼らの戦い方」と悔しさを滲ませたように、まさにシメオネの完全勝利といってもいい内容だった。
ワトフォードもアトレティコに倣った。
そしてプレミアリーグで、今季初めてリバプールに土をつけたワトフォードも、アトレティコに倣った戦術を用いたのだ。
4-2-3-1のシステムを取り入れたナイジェル・ピアソン監督は、常に最終ラインを低めに設定。ミドルサードでのプレッシングを極力最小限に抑えた。その代わり、自陣ゴール前の人数をできるだけ増やし、切り込んでくる両ウイング、2列目からのミドルシュート、そして両サイドバックからの質の高いクロスに、集中力の高い守備で対応した。
リバプールにとっては主力のJ.ゴメスが、フィットネスの問題で出場できなかったことが痛手だった。もともとサイドバックだったゴメスは足も速く、サイドのケアも含めて広い守備範囲をカバーしていただけに、彼の不在は大きかった。
代役のロブレンをスケープゴートにするつもりはないが、試合後トロイ・ディーニーが「(ファンダイクとの)2人のうち、弱いほうを選択した」と話した通り、ワトフォードのエースにかなり手を焼いたのは事実だ。
そのディーニーの追撃弾を含め3得点と、結果だけ見ればワトフォードの攻撃が効いたようにも見える。それはすべて強度の高い守備があったからに他ならない。ちなみにこの試合でリバプールは7本のシュートを打っているものの、枠内シュートは1本のみだった。