サムライブルーの原材料BACK NUMBER
試合に出ずとも、腐らず雰囲気作り。
F・マリノス主将、扇原貴宏の流儀。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2020/02/29 20:30
今季のJリーグ開幕戦でキャプテンマークを巻いてプレーした扇原。マルコス・ジュニオール、同じポジションの喜田とともにチームを引っ張る。
タク&タカはハマの名コンビに。
昨季、リーグ戦で2度目の先発となったホームのヴィッセル神戸戦(5月18日)。4-1と大勝した試合後の会見で、ポステコグルー監督が扇原について言及した。
「扇原は練習でもルヴァンカップでも常にハードワークをこなし、ここにいるぞというアピールをしてくれていました」
指揮官は彼の振る舞いと姿勢を評価していた。
ここにいるぞ。
これは自分のためのアピールではなく、いつでもチームのために働けますよのアピール。
喜田をアンカーに置く形から、彼ら2人を横に並べるドイスボランチの形にしてチームはうまく回るようになった。
お互いが攻守にバランスを図りつつ、役割を分担しつつ、補完しあうことによって、隙間を消すと同時に迫力を生み出していった。タク&タカはハマの名コンビになっていった。
「腐ることなんてないですよ」
優勝した日、取材エリアで扇原は嬉しそうに言っていた。
「シーズン通してみんなでやってきたという自信があったし、練習からみんな準備できていたというか、僕自身も出られない時期があったけど、サブにいるメンバーも含めてみんなで1つになってやってこれた。そういう意味でも総力戦でやれた1年なのかなって感じますけどね」
彼の声を聞きながら、シーズン中にインタビューした際の言葉を思い出した。
「(試合に出られなくて)腐ることなんてないですよ。たとえ出られなくてもキャプテンに指名してもらっているわけだし、チームのことを一番先に考えます。
強いチームというのは出ていない選手でもいい雰囲気でやれている。明るく振る舞って、練習はひたむきに頑張る。(栗原)勇蔵さんも大津(祐樹)くんも(天野)純も僕も……みんなそう。
年齢が上の選手がそうやっていたら、下の選手も自然とそうなる。F・マリノスはそういう選手ばっかやし、みんな真面目やし、いい雰囲気で毎日、練習できていると思います」