サムライブルーの原材料BACK NUMBER
試合に出ずとも、腐らず雰囲気作り。
F・マリノス主将、扇原貴宏の流儀。
posted2020/02/29 20:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Yohei Osada/AFLO SPORT
キャプテンが託せるキャプテン。
王者の横浜F・マリノスがガンバ大阪をホームに迎えた開幕戦。0-2とリードされている後半途中に喜田拓也が交代を告げられた。
確かにこの日の彼は記者席から眺めていても、ACLとの連戦が響いているのか動きが重く感じた1人であった。
喜田は赤のキャプテンマークを腕から外し、扇原貴宏に託してから小走りでピッチを出た。
自分よりもチームのことを先に考える。
王者の反撃が始まろうとしていた。
システムを変えてアンカーに入った扇原のプレーに、自然と目が向くようになる。
マルコス・ジュニオールにクサビのパスを届け、反転からの鮮やかなゴールを呼び込んで1点差に迫った。さらには左サイドを駆け上がる高野遼にパスを送り、チャンスを演出する。
結局同点には至らなかったものの、終盤の猛攻は「マリノス強し」を観ている者に印象づけたに違いなかった。
先のACLシドニーFC戦でも喜田がピッチを離れてからキャプテンマークを巻き、前に出て攻撃に絡んでいく姿があった。4-0と大量リードしてもなお最後の最後まで攻撃の手を緩めない。チームのポリシーを頑なに押し通すその旗振り役となっていた。
扇原のキャプテンシー。
3人制キャプテンの1人として喜田とともに2年連続でアンジェ・ポステコグルー監督から指名を受けている。ソフトな人柄で知られ、仲間をグイグイと引っ張っていくようなタイプには見えない(失礼ながら)。
しかし、彼はいつも自分よりもチームのことを先に考え、かつチームのために働こうとする。