セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イブラ様は迷えるミランを救えるか?
「性悪になって帰ってきたぜ!」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/01/11 09:00
今なおオレ様感全開のイブラヒモビッチ。なお母国では、ライバルクラブへの出資に腹を立てたファンがイブラ銅像の破壊行為に及んだとのこと。
少しだけ寛大になったらしい。
指揮官ピオリにとって最高のクリスマス・プレゼントがやってきたのだ。
「イブラはイブラ、あの男はつねに飢えている。カリスマと経験があり、よりうまくなろうという向上心の塊だ。(合流後数日で)もうチームのムードは変わった。日々の練習でも試合でも、チームに変化をもたらす。それだけの重みをもつ男だ」
チーム合流からわずか5日目で臨んだサンプドリア戦の55分、イブラヒモビッチはFWピオンテクと交代してサン・シーロのピッチに立った。
フィジカルコンディションは完調からほど遠く、走るより歩く時間も多かったが、途中出場でチームへ与えた心理的な後押しは大きかった。復帰即ゴールとはいかず、試合はスコアレスドローに終わった。
今のミランには8年前を知る選手は誰ひとり残っていない。イブラヒモビッチは、チームメイトたちにとっても取扱注意の“劇薬”になる可能性がある。
おや? と思ったのは、ミランが攻め続けた後半、ゴール前での決定機に何度もミスをくり返したFWスソに怒らなかったことだ。復帰初戦ということもあったのだろうが、以前なら“俺にパスをよこせ!”と怒鳴り散らしていただろうに、38歳のズラタンは「OK、OK」とサムアップで周囲を勇気づけることを忘れなかった。
少しだけ寛大になったらしいが、グラウンドで与える迫力は変わらなかった。
俺は昔よりずっと性悪になったぜ!
入団会見で昔より丸くなったのか、と問われたイブラの偽悪的返答はこうだ。
「俺様も2人の子供をもつ父親になった。ずっと年下のチームメイトたちに対して優しくなったかだって? そんなわけあるか、俺は昔よりずっと性悪になって帰ってきたぜ!」
小学校低学年向けに自らを主人公に仕立てたSFサッカーコミック「ストライカー・フォース7」なんてものまで手がけているC・ロナウドなら、間違ってもこんなひねくれた回答はしないだろう。
“正邪2大ストライカー対決”が今から楽しみでたまらない。劇薬イブラはミランを救うことができるのか。また、シーズン終盤にサン・シーロ遠征を控えるボローニャDF冨安は、イブラとどうマッチアップするのか。
スウェーデンの雪山から遠く離れたイタリアで、胸踊るセリエA後半戦が始まった。