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イブラ様は迷えるミランを救えるか?
「性悪になって帰ってきたぜ!」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/01/11 09:00
今なおオレ様感全開のイブラヒモビッチ。なお母国では、ライバルクラブへの出資に腹を立てたファンがイブラ銅像の破壊行為に及んだとのこと。
ボバンが叱責、ドンナルンマは涙。
現場のトップであるCFOボバンは「壊滅的だ。恥ずべき試合だ」と後輩たちをきつく叱責し、21年ぶりという5点差黒星の屈辱に守護神ドンナルンマは涙を流した。ミランを怖れるクラブは年々少なくなっている。
昨季最終節までCL出場権を争ったOB監督ガットゥーゾの退任にともない、今季から指揮を執った新監督ジャンパオロは、理想とする組織的サッカーを植えつけられず開幕から6戦4敗、わずか4カ月足らずで見切りをつけられた。
10月初旬から現指揮官ピオリが後任に就くも、上位陣にはまるで歯が立たず、就任後10試合で稼いだ勝ち点は12ポイントのみと低空飛行が続いた。
拙速な若手傾倒と寄せ集め外国人選手では、すぐに一体感を作り上げることは難しい。現場の変革を急ぎすぎたフロントの責任は重いが、今は責任の追及より少しでも勝ち点を稼ぐことが先決だ。
38歳、特効薬はいまだ有効なのか。
今のミランは、赤と黒の縦縞を着ていなければどこの地方クラブかと錯覚するぐらい、驚くほどボールが回らない。
昨年の夏に決して安くない金額をはたいて集めたMFベンナセルもクルニッチも、前監督ジャンパオロのために獲得した選手だから、後任のピオリにできるのは帳尻合わせぐらいだ。結果が出ずに疑心暗鬼になっているチームにシーズン中の抜本的なチーム改造はリスクが大きすぎるが、現有戦力のままでは後半戦でジリ貧になるのが目に見えている。
そこそこの万能薬でお茶を濁したり、まったくの新薬を試す余裕はミランにはない。必要なのは即効性があり、誰もが認めるビッグネームの“特効薬”イブラヒモビッチだった。
ミラニスタたちの熱烈歓迎を受けたイブラだが、38歳という年齢からくる不安説は否めない。特効薬の有効期限は蓋を開けてみるまでわからない。
どんな名手であっても、古巣ミランへの「出戻り」が苦い結果に終わることは歴史が証明している。古くは1994年に復帰したフリットから2008年のシェフチェンコ、2013年のカカに至るまで、クラブの栄光を担ったバロンドール受賞者たちが軒並み出戻り入団では躓いたとあれば、懐疑論が出ても仕方ない。
だが、それでもイブラなら、とミラニスタたちは期待してしまう。