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イブラ様は迷えるミランを救えるか?
「性悪になって帰ってきたぜ!」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/01/11 09:00
今なおオレ様感全開のイブラヒモビッチ。なお母国では、ライバルクラブへの出資に腹を立てたファンがイブラ銅像の破壊行為に及んだとのこと。
でかくて巧いイブラの相棒は誰に。
ズラタンは“でかくて巧い”ストライカーの代名詞だ。性格はともかく戦術適応能力は抜群に高いから、彼を攻撃陣の新たな柱に据えるのは理に適っている。ピオリ監督が悩むべきは、3トップの中央に据えるイブラの左右に誰を置くかだけだろう。
エースFWピオンテクと鳴り物入りで入団してきたFWラファエウ・レオンが年末までに挙げた得点はそれぞれ4ゴール(17試合)と1ゴール(13試合)のみで、イブラ加入は彼らに刺激を与え活性化させる狙いもある。
ミランが抱える何より大きな泣き所は、グラウンド上に真のリーダーが欠けていることだった。
24歳の主将ロマニョーリは健闘しているものの、タイトル歴がないからカリスマがない。20歳のイタリア代表正GKドンナルンマもベテランMFボナベントゥーラも、性格的に“俺についてこい”タイプからは程遠い。老舗クラブにはリーダー役を背負う人材がいなかったのだ。
ガッリアーニを“壁ドン”した伝説。
「31年間のミラン生活でわしは多くのトッププレーヤーを見てきた。彼らのなかには激しい性格の者もいるし、口論も何度も見てきた。しかし、練習で手を抜いたチームメイトにつかみかかって、ロッカールームの壁に打ちつけた男など、ズラタンの他には誰ひとりおらん」
ミランの元CEO兼副会長ガッリアーニは、イブラヒモビッチに任せておけば大丈夫だと太鼓判を押す。
かつて帝王ベルルスコーニとともに世界最強クラブを作り上げ、29個ものトロフィーを掲げた名フロントは、2017年春のクラブ売却とともに退任。一時サッカー界から遠ざかっていたが、帝王がセリエCのSSDモンツァを買収すると昨年秋にその3部クラブにCEOとして舞い戻った。
ちなみに、ガッリアーニは2018年3月に行われたイタリア上院選挙に当選した、現職の国会議員でもある。
古巣への愛は不変だが、LAギャラクシーとの契約が切れてフリーになったイブラに「将来のセリエA昇格を目指すモンツァに来てくれと頼んだら大笑いされた」と地元紙に明かした。
「イブラは妥協を許さない男だ。年を取った分、余計にチームを引っ張る責任を感じるようになっている。必ずや今のミランに新風を持ち込んでくれるだろう」
リーダー不在が泣き所だったチームにとって、“俺様主義”のズラタン以上に頼もしい助っ人はいない。後半戦でミランの対戦相手が受けるプレッシャーは段違いに跳ね上がるだろう。