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イブラ様は迷えるミランを救えるか?
「性悪になって帰ってきたぜ!」
posted2020/01/11 09:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
ズラタン・イブラヒモビッチの別荘地に行ったことがある。
北欧スウェーデンの首都ストックホルムから空路で1時間北上して、さらに雪の壁の中をバスで2時間近く行った先にあるスキーリゾート地だ。黒い針葉樹林の山頂気温はマイナス20度だった。
陽光明るい昼間に見る空と雪のコントラストに心奪われる一方、しんと静まり返った闇夜の雪山も忘れられない。
「ズラタン? 年末年始の休暇は家族とここで過ごすんだよ。ヘラジカ狩りも好きみたいだからね」と、タクシー運転手。
しかし今年の元旦、イブラヒモビッチは別荘にはいなかった。
昔みたいにサン・シーロを震わせてやる。
窮地にある古巣ミランからのラブコールに応じ、ミラノのリナーテ空港に降り立つと、彼は駆けつけたミラニスタたちにこう豪語した。
「俺はまだやる気も自信も情熱も失っちゃいない。昔みたいに(サポーターを歓喜で跳ね飛ばせて)サン・シーロを震わせてやる」
王様イブラヒモビッチが、セリエAに帰ってきた。
1月2日にチーム合流した彼は、わずか4日後の第18節サンプドリア戦に途中出場し、再デビューを果たしている。8年ぶりのイタリア復帰となるが、イブラに臆するところはない。
「俺様も自分がもう28歳じゃないことはわかっている。だがな、賢い選手ってのは(年齢とともに)効率のいいプレーにも目覚めるんだぜ。走る距離は少なく、それでいて40mのロングシュートを打ったりとかな……」
復帰したミランは病んでいる。それも、かなりの重症といっていい。
11位という2桁順位で年を越したミランの惨状は、目を覆いたくなるばかりだ。
2019年のラストゲームではアタランタに手も足も出ず、0-5の歴史的大敗を喫した。スカローニ会長以下、首脳陣全員が顔を揃えたゲームでの大失態にクラブ創設120周年の祝賀ムードは吹っ飛び、栄光の歴史も泥にまみれた。