“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
今季1点でも金子翔太は欠かせない。
J1清水を支える右サイドの働き者。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/10/05 19:00
清水はJ1第27節湘南戦で6-0の快勝。金子は得点こそなかったが、3得点に絡む活躍を見せた。
絶対にJ2に落としてはいけない。
ゴールを奪いに行きたいが、チーム全体のことを考えると、自分が余計なエゴを出すべきではない。あくまでチームの勝利のために何ができるかを優先的に考えている。純粋に点を取りたいという気持ちの狭間で彼は大いに苦しんだ。
「シーズンも終盤に差し掛かり、チームが降格圏に近い順位にいるので、1つでも多くの勝ち点を取るということが大事。徐々に自分のやるべきことがはっきりしてきたんです。絶対にこのチームをJ2に落としてはいけない。その気持ちがどんどん強くなっていった」
葛藤の末に、自分がやるべきことを割り切れるようになっていた。だからこそ、3試合ぶりにスタメン復帰した第26節名古屋グランパス戦、そして湘南戦と2試合続けてアシストをマークできたのだろう。
チームプレーに徹した名古屋戦。
「名古屋戦で変わりました。スタメンを外れた時に気づいたんです。僕は今年、数字に固執してしまっていた。もちろんゴールは欲しいけど、ゴールに固執する心を思い切って捨てて、『今年はそういうシーズンなんだ』と割り切ってやろうと思ったんです。自分のプレーに対し、チームの勝利の方にフォーカスして、ゴールに固執する自分を解放しようとしたのが名古屋戦でした。
そこでアシストができて、天皇杯のジュビロ磐田戦でも悪くないプレーができたし、湘南戦でもアシストや起点となるプレーができた。昨年のパフォーマンスにようやく近づいてきた気がするんです」
もちろん、ゴールを諦めたわけではない。だが、それを冷静なもう1人の自分がコントロールすることで、自らのプレーのリミッターを外すことができた。すると、「重い鎖が取れたような感覚だった」と語ったように、精神的にも肉体的にも軽くなった。