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リベリー加入がもたらした化学反応。
今季はフィオレンティーナに要注目!
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byUniphoto Press
posted2019/08/29 11:40
昨季16位と低迷したフィオレンティーナ。若手主体のチームにリベリーはどんな変化をもたらすのか。
リベリー獲得は再建計画の1つ。
とはいえ昨シーズンのフィオレンティーナを振り返ると、突拍子もないセリフのように思われる。若手やセリエA初挑戦の選手たちで構成されたチームは脆く、後半戦はまるで勝てずに低迷。最終節で何とか残留を決めるという体たらくだった。
そんな彼らがリベリーのようなスターに手を出し、大きな目標を宣言させるとは、現実を考えない無茶な経営戦略なのではないかと思う向きがあっても不思議ではない。
しかし、事実は少し異なる。6月にアメリカ資本下となったクラブの経営陣は、堅実な計画に従ってチームを立て直そうとしている。リベリーの獲得は、再建計画に相応しい補強として実現したということのようだ。
クラブを尊重する新会長。
経営権を取得して会長に就任したのは、個人総資産はおよそ48億ドル(約5000億円)と言われる大金持ちである。ケーブルテレビやインターネットの放送事業会社『メディアコム』を保有するイタリア系アメリカ人資本家のロッコ・コミッソだ。
「ここには、たくさん金を使うために来たよ」と積極的な投資を約束したが、その一方で野放図な補強などには走らなかった。会長の一存でベースから変えるようなことはせず、これまでのクラブのスタンスを尊重することにした。
コミッソ会長は、スポーツビジネスの経験豊富な側近のジョー・バローネをクラブに置き、現場とアメリカ資本の架け橋となるように努力している。結果、彼らはディエゴ・デッラバッレ率いる前経営陣が残した優秀な若手と、それを輩出した優秀な下部組織をクラブ戦略の柱とする判断を下したのだ。
そのうえで、競争力あるチームに仕立てることを目指している。まずはイタリア代表のエース格に成長していた21歳のフェデリコ・キエーザの慰留へ動いた。彼には水面下でユベントスやインテルなども接触していたとの噂があったが、コミッソ会長が直々に会談に乗り出し話し合った。