マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
奥川恭伸以外もぜひ覚えておきたい、
非エリートから選ぶ「私だけの逸材」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/08/21 12:10
八戸学院光星・山田怜卓の投球には大きな可能性を感じる。こんな将来の逸材を見つけるのも甲子園の楽しみだ。
八戸学院光星・山田には驚いた。
なんといってもいちばん驚いたのは、八戸学院光星・山田怜卓投手(やまだ・りょうた/3年・178cm74kg・右投右打)だろう。
2回戦、智弁学園戦の6回、7-3とリードしながらも1死満塁の大ピンチにリリーフでマウンドに上がった。
今年のチームはバッティングとチームワークは文句なし。ただし投手のほうは、とっかえひっかえでいくしかない。
八戸学院光星・仲井宗基監督の嘆きは耳に届いていた。
さあ、どうなることか……と思ったら、代わりばなからサイドハンドの腕の振りがうなる。指にかかった速球はコンスタントに140キロ前半。スライダーも変化点が打者に近く、その上に曲がり幅が大きいから、打者視線からは横に消えていくような球筋のはず。
いきなり速球で空振り三振を奪うと、続く打者には強烈なピッチャー返しを浴びたがひるまずに、むしろ腕の振りがすごみを帯びる。
私が大学か社会人の監督なら……。
際のコースをボールにとられたり、正面の打球がイレギュラーで大きく跳ねて外野の間を抜ける不運もあったが、逆境に向かっていく覇気がはっきり見える。
本人、スリークォーターの意識で投げていると言うから、“真性のサイドスロー”なのに手首を立てて投げられる。速球にスピンもかかるし、スライダーもリリースで強烈に切れる。
これだけの「本格派サイドハンド」が、青森県予選で7イニングちょっとしか投げていないのだから、「甲子園」は奥が深い。
私が大学か社会人の監督なら、すぐにでも「話」を決めて帰る。この試合で奪った11のアウトのうち7奪三振。終盤の3イニング、強打の智弁学園打線を2安打無失点に抑えて3回戦に勝ち上がった。