マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
奥川恭伸以外もぜひ覚えておきたい、
非エリートから選ぶ「私だけの逸材」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/08/21 12:10
八戸学院光星・山田怜卓の投球には大きな可能性を感じる。こんな将来の逸材を見つけるのも甲子園の楽しみだ。
津田学園・前の後ろに降井あり。
サイドハンドで驚いたのは、津田学園・降井隼斗(ふるい・はやと/3年・172cm57kg・右投右打)も同様だった。
2回戦の履正社戦。私の中では奥川、中森に次いで大会No.3の快腕と見ていた津田学園・前佑囲斗(3年・182cm88kg・右投右打)が、先発の3イニングで6点を奪われた。それを受けて4回からマウンドに上がったのが、降井投手。
大きく見えるな……というのが第一印象だった。
172cm57kg。大人顔負けの屈強な体躯の球児が多数を占めつつある今の甲子園で、どちらかといえば中学生サイズだが、マウンドの立ち姿は「176cm73kg」。私の見立てはそれぐらいだった。
投げ始めて驚いた。
その体で、どうしてこれだけの瞬発力!
リリースの瞬間に爆発する全身のパワーがすばらしい。小柄なサイドハンドでコンスタントに140キロ前後の球速帯を維持できるのが、まずすごい。
時間差スライダーでしつこく勝負。
速球以上の猛烈な腕の振りからスッと落ちるような「時間差スライダー」が効く。ホームランの打てる強打のリードオフマン・桃谷惟吹中堅手(ももたに・いぶき/3年・175cm81kg・右投右打)に対し、スライダーを5球続けて空振りの三振に仕留めた。こんなしつこい攻め方ができるのも、高いピッチングセンスにほかならない。
きちんと鍛えたら、今秋のドラフト1位候補・津森宥紀(東北福祉大)のようなパワフルなサイドハンドになれる。
訊けば、卒業後は地元企業で軟式野球に励むそうだ。
硬式じゃないのがちょっと残念だが、三重や愛知は「社会人軟式」の聖地である。奮投を祈りたい。