ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
開幕戦圧勝のマンU、急激な若返り。
102億円DFにギグスも驚いた韋駄天。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/08/16 11:40
レスターを経て赤い悪魔の一員となったマグワイア。ユナイテッド再建の主役となれるか。
すでに8000万ポンドの価値がある。
「他の選手たちに与えた影響を見ると、ハリー・マグワイアに費やした8000万ポンドはすでに価値があったように思える」
『BBC』でそう言ったのは、ギャリーの弟、フィル・ネビルである。また、試合前はセンターバックに8000万ポンドも支払ったことを「馬鹿げている」と疑問視していた『スカイスポーツ』の解説者ポール・マーソンも試合後、「失礼なことを言ってしまった」と慌てて謝罪したのだった。
ユナイテッドに、新たなリーダーが誕生した瞬間である。
ギグスに憧れたジェームズの初得点。
マグワイアのインパクトがあまりに特大だったため陰に隠れがちだが、この開幕戦で最高のシーンはどこだったかと聞かれたら、個人的にはユナイテッドが終盤に4点目を入れた後の場面だったと思う。
そのダメ押しゴールを決めたのは、途中出場でこちらもデビューを飾った新加入のダニエル・ジェームズだった。2部のスウォンジーから、1500万ポンドの移籍金でやってきた21歳のウェールズ人ウインガーである。
スールシャール監督によって74分にピッチへと送り出されたジェームズは81分、自陣でのボール奪取からポグバがロングカウンターで左サイドを全速力で駆け上がると、それに素晴らしいスピードでついていき、ポグバの優しいラストパスを受けて、右足を振り抜いた。
一度はシュートを撃ちあぐねたし、撃ったボールもDFに当たってコースが変わって入ったシュートで、決して綺麗なものではなく不格好だったかもしれない。それでも、ジェームズにとっては大事な、大事なゴールになった。
それは、彼が子供の頃からマンチェスター・Uのファンで、憧れの選手がライアン・ギグスだったから、というだけの理由ではない。ゴールを決め、チームメートたちに揉みくちゃにされてひとしきりお祝いされた後、彼は感極まった表情で空を指差し、天を仰いだ。