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“真の漢”デロッシがローマを去る。
熱狂を求め、アルゼンチンへ飛ぶ。
posted2019/08/16 08:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
欧州のトッププレーヤーたちが、キャリアの晩年にアジア各国や北米を目指すようになって久しい。
だが、昨季までASローマの主将だったMFダニエレ・デロッシが目指したのは南米アルゼンチンだった。
先月26日、ブエノスアイレス入りした歴戦の勇士は、ボカ・ジュニオルスへの入団会見に臨んだ。
「いつかボカでプレーしたいとずっと思っていた。ここのサッカー熱を目の当たりにして心底嬉しい。俺は勝つためにきた。ボカのために全身全霊を捧げよう」
2001年のデビュー以来18年をASローマ一筋に捧げてきたセリエA最後のバンディエラが、南半球でサッカー人生最後の戦いを始めようとしている。
本物に進化したドイツW杯。
金髪のあどけない少年ダニエレが、ASローマのトップチーム練習に参加を許されるようになったのは、スクデットを獲った伝説の2000-01年シーズンだ。
7つ年上ですでにアイドルとなっていた王子トッティやFWバティストゥータら豪傑たちに囲まれながら、デロッシは幼い頃からの夢だった本拠地「オリンピコ」のグラウンドに立った。その熱狂の中で血気盛んな若人は力をつけていった。
イタリア代表監督リッピに見込まれ、22歳でアズーリの一員としてドイツW杯へ臨んだ。グループリーグ2戦目で相手に肘打ちを見舞い退場を告げられると、己の犯した愚行の重さに悔恨の涙を流した。
出場停止処分が解けたのはフランスとの決勝戦。名将の侠気あふれる采配によって後半にトッティと交代起用されると期待に応え、延長後のPK戦でも大役を果たし世界一に貢献した。このとき、一流を知る本物のMFへひと皮むけた感がある。