ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
開幕戦圧勝のマンU、急激な若返り。
102億円DFにギグスも驚いた韋駄天。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/08/16 11:40
レスターを経て赤い悪魔の一員となったマグワイア。ユナイテッド再建の主役となれるか。
最愛の父へと捧げるジェスチャー。
それは、亡くなった最愛の父へと捧げるジェスチャーだった。
今年5月、ウェールズ代表のキャンプに参加していたジェームズの下に、突然の訃報が届いた。父ケバンさんが、60歳の若さで生涯の幕を閉じたのだ。病気を患っていたそうだが、それでも不意の報せだったという。
スウォンジーからマンチェスター・Uへの移籍が決まったのは、そのわずか3週間後だった。常に息子のサッカーキャリアを応援していたという父に、オールド・トラッフォードでプレーする雄姿を見せたかったに違いない。7月に答えた『BBC』のインタビューでは、「今でも少し落ち込むことがあるけれど、きっと父なら、ただ一生懸命にハードワークをして、プレーしろと言うだろう」と気丈に振る舞い、新天地で練習に励んだ。
そして、プレミアリーグの開幕戦でチャンスを与えられると、それをつかみ取り、見事にデビューゴールを決めた。
ギグス「彼ほど速い選手は……」
「今日、もし父がここにいられたら素晴らしかっただろうね。でも、それは叶わなかった。だから僕はあのゴールを彼に捧げたんだ」
試合後にそう語ったジェームズが父に捧げるゴールは、これが最後にはならないはずだ。ビッグクラブですぐにレギュラー獲得とはいかないかもしれないが、2部上がりの若手ウインガーはこの試合で、少なくとも“スーパーサブ”としてはすぐにでもプレミアで通用するスピードを持っていることを証明したのだから。
武器は圧倒的なロングスプリント力だ。憧れのヒーローであり、今は代表で指導を仰ぐギグスに「私のキャリアで見てきた中では、彼ほど速い選手は見たことがない。これまで多くのスピードスターと一緒にプレーし、対峙してきた私が言うのだから、これには大きな意味があるよ」と言わしめるほどだ。
プロデビューしたのは2018年2月でまだ1年半しか経っていないのだが、2部リーグでは自陣から自慢の快足を飛ばして独走ゴールを決めたこともある。ユナイテッド加入後のプレシーズンマッチでも、カウンターの場面で何度も素晴らしい健脚を見せてきた。そして、この開幕戦のゴールだ。間違いなく、彼の足はユナイテッドの新しい武器になる。