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「レアルは無礼」「“事前情報”の圧が特に激しい」バロンドール表彰式“ボイコット騒動”にフランス誌関係者が反論「モラル面でも敗北だ」
posted2025/02/03 17:28

ロドリがバロンドールに輝いた一方で、2位ビニシウス、3位ベリンガムのマドリー勢は表彰式を欠席した
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田村修一Shuichi Tamura
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REUTERS/AFLO
世界最高のサッカー個人賞であるバロンドール2024の表彰式は、昨年10月28日、パリのシャトレ座においておこなわれた。1956年にフランスフットボール誌(以下FF誌)により創設され、68回を数えるバロンドールは、その歴史、権威という点からも、FIFAベストアワードなど他の追随を許さない、唯一無二の個人表彰である。
今回のバロンドールは、これまでとはいささか様相を異にしていた。過去の受賞者がひとりも入っていない30人の候補者リスト。混戦が予想された投票は、いざ蓋を開ければロドリ(マンチェスター・シティ/スペイン)とビニシウス(レアル・マドリー/ブラジル)の一騎打ちに。そして僅差でのロドリの勝利と、レアル・マドリーのクラブをあげての表彰式ボイコット……。
表彰式からすでに3カ月が経つが、何かと話題の多かったバロンドール2024を、同賞を主催するFF誌のヴァンサン・ガルシア編集長とともに3回に分けて振り返る。〈全3回の1回目〉
ロドリの言いたいことはよく分かる
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「(私の受賞は)サッカーの勝利だ」
ナタリー・ポートマンとジョージ・ウェアから黄金のボールを授与されたロドリは、受賞のスピーチでそう語った。これまでのバロンドーラーの系譜とは異なる、英雄(ヒーロー)たちではないサッカーそのものの勝利。ボランチという地味で注目を浴びることの少ないポジションである。しかしながら攻守の要であり、チーム全体の舵取りが求められるポジションである自らが受賞したことを、ロドリは「サッカーの勝利」という言葉で表現した。
「彼の言いたいことはよくわかる」と、ヴァンサン・ガルシアは言う。
「『ゴールをあげるだけがサッカーではない』とも『自分はエンジンルームの中にいるようなものだ』とも彼は語っている。チームプレーとしてのサッカーを体現している選手が受賞したことに意味があったということだ」
「ビニシウスもジレンマを感じただろう」と語るワケ
たしかに過去に守備的な選手の受賞はあまり例がない。ヤシントロフィーにその名を刻む伝説のGKレフ・ヤシン(1963年)やリベロのフランツ・ベッケンバウアー(72年、76年)、マティアス・ザマー(96年)、ファビオ・カンナバーロ(2006年)ぐらいである。