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巨人は「恐怖」でチームを劇的改革。
“鬼になった”原監督の采配とは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/04/01 16:00
叱る時は叱るが、褒める時はその何倍も笑顔で褒める原辰徳監督。3月30日の広島戦、試合後の選手を労うシーン。
ゲレーロ「特別なレッスンだった」
昨年、復帰が決まった直後に原監督は「アドバイスがある」と通訳を介して、ゲレーロにメールを送った。
2月の宮崎キャンプでは初日からスイングルームで30分の直接指導を行った。
「スイングするときにどうしてもボールを覗き込んで頭と体の動きが大きくなってしまう」
室内でのスイング指導にもかかわらず肘当てとレガースをつけたフル装備で現れた助っ人大砲に「彼はバッターとしての正装で来てくれた」と指揮官が顔をほころばせると、指導を受けたゲレーロも「特別なレッスンだった」と感激の面持ちを見せていた。
ところが、である。
そんな蜜月かと思われた関係に、原監督は“恐怖”を落とし込んだ。
ゲレーロを再生させた、その手腕。
3月9日、京セラドームでのオリックスとのオープン戦でのことだった。
「あんな守備じゃ使えないな。エラーはしないかもしれないけど、まったく積極的にボールを捕りにいかないんだからお話にならない。本人にもこんなつもりじゃダメだって話をしたよ」
厳しい表情で監督はゲレーロへの不満を口にした。「本人に話をした」と言葉は穏やかだったが、実際はもっと激しく叱責に近いものだった。
「使うと決まっている訳ではない。もっとちゃんとプレーをしろ!」
試合前のミーティングでコーチを通じて釘を刺して、先発から外したのだ。
しかもこの叱責にゲレーロがふてくされたような態度を見せたことも追い打ちをかけた。
ただこれを契機に、上手くはないながらも守備への積極性を見せたことが、ゲレーロを再生する本当の道へとつながっていく。