プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人は「恐怖」でチームを劇的改革。
“鬼になった”原監督の采配とは?
posted2019/04/01 16:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
100の言葉よりも1つのサインが、昨年までとの違いを選手に強烈に焼き付けたはずだ。
そのサインが出たのは3月30日の土曜日、広島との開幕シリーズ第2戦のことである。
4-2と2点をリードした9回。2つの四球でつかんだ無死一、二塁のチャンス。そこで三塁側ベンチに陣取る巨人・原辰徳監督の手が動いた。
打席の坂本勇人内野手が三塁コーチャーのサインを覗き込む。そうして打席に入ると、構えたバットのヘッドに右手を添えて動かした。
送りバントである。
なに食わぬ顔で坂本がサイン通りに投手前にボールを転がす。送りバントは成功した。
そうして続く丸佳浩外野手も歩いた満塁から、4番・岡本和真内野手の内野ゴロでダメ押しとなる5点目が入った。
坂本へのバント指示は2年ぶり。
「私の中ではゲームを支配するための最善策ということです」
試合後にその場面への質問が飛ぶと「それがなにか?」といった表情で指揮官は、サインの意図をこう説明した。
ただ坂本に送りバントのサインが出たのは2年前の2017年、シーズン終盤の9月12日の阪神戦以来のことだった。もっと言えば高橋由伸前監督時代の3シーズンで、坂本に送りバントのサインが出たのは、そのときを含めてわずか2回しかない。
それがいきなり開幕2戦目、である。
しかも伸るか反るかの同点や負けている場面ではない。リードしてダメ押し点を取りにいくシチュエーションで容赦なく出されたサインだったのである。