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鹿島が直面した「変化の必要性」。
大岩監督、内田が語る切実な理由。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/02/22 17:30
鹿島アントラーズの「空気」を色濃くまとう内田篤人。彼のような選手が強豪の伝統をつないでいくのだろう。
勝利から逆算するようなスタイル。
それでも、特別指定の名古新太郎を含む在籍33選手のうちGKの川俣慎一郎以外の32選手を起用し、ACL優勝、リーグ戦3位、ルヴァンカップと天皇杯、クラブW杯ベスト4と戦い切れたのは、「チームへの献身」を身上とする鹿島の底力であり、指揮官も自身のチームの強みと認める一体感の表れだった。
4-4-2のシステムで戦い続ける鹿島は、高い技術や戦術眼といったポテンシャルを持つ選手で常に形成されてきた。勝利から逆算するような、効率的なスタイルが鹿島の持ち味だ。
サイドバックを活かした攻撃、センターバックが輝くセットプレー、少ない手数でボールを運び、ゴールを仕留める展開力。相手のスキを見逃さない狡猾なボランチの存在感も絶大だ。
「自分がゴールを決めてやる」という欲すらもエゴと考えるジーコのスピリッツが、全員守備に好影響を与えているのは言うまでもないだろう。
三冠のトニーニョ・セレーゾ、3連覇のオズワルド・オリヴェイラといった名将たちが率いた時代も、ピッチ上での試合を動かしたのは選手自身だった。指揮官は指示を最低限にとどめることで選手の自主性を伸ばし、試合中に改善、修正できるチーム力を養った。
「何を伝え、何を伝えないのか?」ということが鹿島を率いる指揮官には求められる。そこは大岩監督も強く意識していた。
選手の感覚を信頼する伝統。
昨季何度も目にしたシーンがある。ベンチに立ちピッチへアドバイスを送る曽ケ端準や小笠原の姿から、監督と選手との信頼感の強さが伝わってきた。
「ピッチに立った者にしか感じられないことがある」という選手の感覚への信頼も強い。そんな文字通りの選手ファーストが鹿島の強さの秘密であり、そういう文化が優秀な選手を育ててきた。
昨季ワールドカップ以降の後半戦に活躍した鈴木優磨、三竿健斗、安部裕葵、安西幸輝、犬飼智也といった選手の成長を見れば、その効果を感じざるをえない。彼らの進化がチームに勢いをもたらし、ACL優勝へと繋がった。