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フランスではすでに“王様”扱い!?
ムバッペ、栄光に包まれた2018年。
text by
デーブ・アパドゥーDave Appadoo
photograph byStephane Mantey
posted2019/01/11 11:30
20歳にしてフランスサッカー史だけでなく世界のサッカー史に永遠に消えない名を刻むこととなったキリアン・ムバッペ。
2月25日:クラシコとのランデブー。
この2月25日という日は、ネイマールの活躍によりPSGがオリンピック・マルセイユ(OM)を3対0と破り、リーグ制覇をフランス全土に確信させた日である。しかし同時にこの日は、ムバッペがクラシコにおいて初ゴールを記録した日でもあった。
この日はまたムバッペにとってリベンジの意味もあった。
マルセイユでおこなわれたシーズン最初のクラシコで、彼はピッチ上でもピッチの外でも大きな失態を演じたのだった。試合前に「クラシコといえどもリーグの他の試合と変わりはない」とコメントしたうえに、2対2の引き分けに終わった試合の後で「マルセイユにとっては大事な試合かもしれないが、僕はクラシコを戦うためにPSGとの契約にサインしたわけではない」と語って物議をかもした。
この苦い経験からムバッペは教訓を得た。
パルク・デ・プランスでおこなわれた試合では開始11分に先制ゴールを決めて、詰めかけた観衆とメディア、テレビで見るOMのサポーターたちを黙らせたのだった。
それから数か月がたった10月28日、今度はベロドロームで彼はPSGの先制ゴールを決めた(試合は2対0でPSGの勝利)。
試合前のミーティングにアドリアン・ラビオとともに遅れ、罰としてベンチスタートを命じられながら交代出場してわずか3分でのゴール。
最初のボールタッチでの得点は、たとえ短い時間でもキッチリと仕事ができること――非凡さの証明であるといえた。
6月30日:世界とのランデブー。
優れたパフォーマンスを披露する選手たちがいる。
より決定的な仕事をする偉大な選手たちもいる。
さらに稀であるのは想像力を刺激する選手である。
この日、ムバッペは、ワールドカップの歴史にその名を刻んだ。フランスがアルゼンチンを4対3と下したこのラウンド16において、彼はふたつの素晴らしいゴールを決めた。
わずか4分の間の2得点。2対2と拮抗した場面での、試合を決定づけた得点だった。
そればかりではない。試合開始から彼は世界を震撼させた。
ハーフライン手前からドリブルを始めるとあっという間にDF3人を置き去りにし、GKのファウルを誘ってPKを得たのだった。
まるで異世界ともいえるそのプレーは余すところなく世界中に伝えられ、すべてが詳細に分析された。あるデータによると、ペナルティエリアに到達するころのスピードは(ウサイン・ボルトをも上回る)時速38kmにも達していたという。
彼の姿は世界中の人々の目に焼きついた。
ワールドカップ獲得の最後のチャンスに賭けていたリオネル・メッシの野望は、ムバッペという超自然的な才能によって絶たれた。
6月30日こそは、メッシからムバッペへと主役が交代したことを世界に知らしめる日となったのだった。