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レッドブル・ホンダの命運握る男、
M・フェルスタッペン21歳の野望。 

text by

今宮雅子

今宮雅子Masako Imamiya

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2018/12/26 17:00

レッドブル・ホンダの命運握る男、M・フェルスタッペン21歳の野望。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

今季2勝を挙げ、ドライバーズランキング4位。貴重な特写に笑顔を見せてくれた。

「自分を変えるつもりはない」

 第5戦スペインGPでシーズン初の表彰台を飾ってようやく軌道に戻ったと思われた'18年シーズン。しかし第6戦モナコでは土曜朝のフリー走行でクラッシュ、レースは最後尾から9位まで挽回したものの、それはけっしてマックスが望んだ結果ではなかった。一方のリカルドはエネルギー回生を失ったマシンで、中国GPに続くシーズン2勝目を飾っていた。

 この間、フェルスタッペンはメディアの批判を浴び続け、チームの上層部も“アプローチを変えるべき”という見解を隠そうとしなかった。しかし一貫して、本人は「自分を変えるつもりはない」と反駁した。

「アプローチを変えるべきだというコメントには本当にうんざりしている。僕は決して変わらない。何故なら、その姿勢を貫いてきたことによって僕が今日のポジションにいるからだ。いずれにしても、そういった意見に耳を傾けるつもりはない。

 たしかに、シーズン序盤は思ったとおりにいかないこともあった。中国やモナコではミスもおかしたと思う。でも、過ぎたことばかり話題にするのは意味がない。僕はこの先に集中しているんだから。

 どのグランプリでも、僕は必ず速さを発揮してきた。だからいい流れに変える自信はある。もし僕らが本当に遅かったらそれこそ問題は重大だっただろうけれど」

元F1ドライバーの父の存在。

 本当は自問自答を繰り返していたことだろう。しかしたとえばリカルドという先輩や、同世代のガスリーが外界を遮断しない精神的な強さ――自らの思考経路、ときには逡巡を率直に口にする術を備えているのに対して、フェルスタッペンは心の奥を語らず、強固な殻を築くことを選んだ。記者会見では「これ以上同じ質問を浴びるなら、頭突きをくらわしたくなる」とさえ言った。そして宣言したとおり、カナダGP以降は自らの流れをつかむことに成功し、レッドブルリンクで開催された第9戦オーストリアGPでは優勝を飾った。

 元F1ドライバーの父、ヨス・フェルスタッペンのもと、英才教育を受けて育った。しかしいまでは、身近な誰かにアドバイスを仰ぐこともないと言う。

「どこが間違っているのか、上手くできているのか。僕は即座に気づき、自分で分析することができる。彼らが僕に何かを指摘する必要はもうないんだ。成長するためには、自らハードワークを重ねるのみだね。たとえ結果にすぐ反映されなくても、優れた経験を積む努力を続けるしかない」

【次ページ】 「ホンダと一緒に仕事するのが待ちきれない」

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