F1ピットストップBACK NUMBER
小林可夢偉、約束を果たしたF1復帰。
この時を見据えた特別な“準備”とは。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2014/01/22 12:00
2012年の日本グランプリで表彰台に上った時の可夢偉。この雄姿が再び鈴鹿の地で見られることを期待したい!
「再びF1のレースドライバーに戻ることができすごく嬉しいです。ケータハムF1チームと一緒に戦えることを非常に楽しみにしています」
小林可夢偉のF1復帰が1月21日、正式に発表された。
2012年まで3年間、レギュラードライバーを務めていた可夢偉にとって、2年ぶりのF1復活である。わずか1年で失ったシートを取り戻したわけだが、それは2シーズン前に表彰台を獲得したザウバーではなく、昨シーズン最下位に終わったケータハムのシートだった。
しかし、ここまでの道程は想像以上に険しかったに違いない。
なぜなら、F1の表舞台から1年以上姿を消した後に、レギュラードライバーとしてF1に復帰した日本人ドライバーは、過去にいなかったからである。
鈴木亜久里、佐藤琢磨もF1復帰は難しかった。
1993年限りでフットワークのシートを失った鈴木亜久里は'94年に1戦だけスポット参戦した後、'95年に無限エンジンを搭載するリジェから完全復帰する予定だったが、最終的にレースに出場したのは6戦にとどまった。
佐藤琢磨も1年間の浪人を経験した後、レギュラーシートを手にしている。
とはいえ、浪人時代の1年間はBARのリザーブ兼テストドライバー契約を結んでおり、F1の世界にとどまっていた。しかも、'03年の最終戦では欠場したジャック・ビルヌーブの代役として出走しており、1年間、F1でレースをまったく戦わずに、その翌シーズンにレギュラードライバーとして復帰したのは、今回の可夢偉が初めて。それだけに、この復活は大きな意味を持つ。
日本人がだれも経験したことがない1年間のブランク後のF1復帰という道は相当、険しかったはずである。