“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
兄の背中を追い、その夢を継ぐ……。
草津東の2年生ストライカー、全国へ。
posted2018/11/28 17:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
第97回全国高校サッカー選手権大会滋賀県予選決勝。かつて選手権準優勝を経験している滋賀の強豪・草津東高と、近年メキメキと力を付けて来た綾羽高の一戦は予想通り激戦となっていた。
1-0の綾羽リードで迎えた後半アディショナルタイム4分。草津東は左CKを得ると、MF山本佳輝が蹴り込んだボールをMF森稜真が執念の同点ヘッドでゴールへ叩き込んだ。
そして延長前半2分にMF小酒井新大が逆転弾を決めて、そのまま草津東が2-1の勝利。
土壇場で同点に追いつき、延長で逆転という劇的な展開で、2年連続の選手権出場を手にした。
歓喜の輪に包まれるピッチと、喜びに沸くスタンド。その中に、ある兄弟の知られざる物語が存在した。
草津東、全国大会への切符獲得!
草津東の2年生FW渡邉颯太。1年の時からレギュラーの座を掴み、昨年度の選手権では1年生ストライカーとして活躍。2年生となった今年は、不動のエースストライカーとしてチームを牽引する存在に成長していた。選手権予選準決勝の伊吹戦では圧巻のハットトリックを達成して6-0の大勝に貢献すると、決勝の綾羽戦でもクサビを受けてからの鮮やかなスルーパスで決勝弾をアシストした。
タイムアップのホイッスルが鳴り響くと、颯太はその場に崩れ落ちながら大粒の涙を流した。全国的に注目される存在になった2年生ストライカーは、全身で選手権出場への思いを表現していた。
彼には、1学年上の兄・悠斗がいる。2年連続の選手権出場が決まった瞬間、悠斗はスタンドでジャージ姿にメガホンを持って、喜びだけではない複雑な思いを抱きながら、弟が喜ぶ姿を見ていた。悠斗もまた草津東高サッカー部の選手だった。
つい3カ月前までは――。