サッカー日本代表「キャップ1」の男たちBACK NUMBER
「あの時の梅崎司」へ、もう一度!
再び代表入りなら今度こそ仕掛ける。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph by“Eijinho”Yoshizaki
posted2018/11/20 17:00
湘南ベルマーレに移籍して1年目にしてルヴァンカップで戴冠した梅崎司。怪我も癒え、活躍するのはこれからだ!
自らも気づかぬ“安堵する心”。
浦和在籍時の3~4年前にはこんな出来事もあった。ファンとのふとした会話でこう言われたのだ。
「梅崎さん、若い頃よく観てました」
幾度も言われてきた言葉だった。それまでは、なんでもない挨拶だと思っていた。しかしふと梅崎は思う。
「それって、過去のことじゃないかなと。変えたいなと思った。同時にあることにも気付いたんです。自分は常に向上心を持っているつもりでいる。でも深層心理で“安堵する心”があったんじゃないかって。若くして日本代表に選ばれた。ビッグクラブの浦和にいる。そういう気持ちです」
レッズでは、湘南ベルマーレへの移籍前の'17年まで試合には絡んでいた。レッズ側からも残留の声がかかっていた。しかし、新たな選択を選んだ。
「あの時の梅崎司」を取り戻すため。
2018年11月の国際Aマッチウィーク。日本代表がキルギス戦の準備に勤しむ時、梅崎は湘南ベルマーレの河川敷の練習場で居残り練習に取り組んでいた。
スタッフを相手DF役とし、ドリブルで交わした後、左右の小さなターゲットにシュートを打ち込む。
新たな指揮官、曹貴裁のいう「あの時の梅崎司」を取り戻すためのトレーニングだった。
つまり、とにかく攻撃を仕掛けていける自分のことだ。
「ずっと“大人”になるための努力をしてきたけど、今、この歳になって“子ども”に戻りたいと思っているんです。今、湘南でそういう気持ちにもう一度なれているのが嬉しいんですよ。
僕、代表キャップ1だけど、選ばれたのはたまたまだとは思っていません。自分のスタイルを貫いたからこそ、選ばれた。
怪我も回復して、コンディションもいい。監督からも日本代表にデビューした頃の自分を求められている。ちょっと生意気で、自分のかたちに持っていければどんどん勝負できるという。本音の自分、素の自分に近づけてきているという実感があります」
それは、10代にして日本代表に入ったという“殻”、ビッグクラブ浦和にいるという“殻”も取り除いた、素の自分の姿だ。かつて、決別しようとした代表時代の自分。今、梅崎は湘南の若い選手に対してこんな冗談も言えるようになったという。
「俺も昔は代表に選ばれたことがあるんだよね~こう見えても」