サッカー日本代表「キャップ1」の男たちBACK NUMBER
「あの時の梅崎司」へ、もう一度!
再び代表入りなら今度こそ仕掛ける。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph by“Eijinho”Yoshizaki
posted2018/11/20 17:00
湘南ベルマーレに移籍して1年目にしてルヴァンカップで戴冠した梅崎司。怪我も癒え、活躍するのはこれからだ!
オシムに呼ばれて代表入り。
そんな梅崎に、リーグ戦でわずか10試合ほどの出場時点でA代表から声がかかる。
8月30日、第21節の浦和レッズ戦(ホーム)に勝ったあとだった。時の監督、イビチャ・オシムが就任後の2戦を終えた後、アジアカップ予選のために中東に遠征するチームに梅崎を加えたのだ。
梅崎司、19歳の時の出来事だ。
Jリーグでは自信満々でも、そこは長崎県出身の10代。いざフル代表となると最初はちょっとひるんだ。
「国を背負う」と武者震い。
「やべーな、どうしよう。有名人ばっかりだな」
一緒に選ばれた当時のチームメイト、西川周作(現浦和レッズGK)と福岡空港に向かう車中でそんな話をした。そこから成田空港経由で中東に向かうのだ。福岡空港では、山岸範宏、坪井慶介、鈴木啓太、三都主アレサンドロ、長谷部誠、田中達也、田中マルクス闘莉王というレッズの面々と合流した。
「まずは、挨拶だろ」
そう西川に声をかけ、一緒に丁重に挨拶をして回った。
前日の試合では、自らも相手守備ラインを切り裂き、浦和レッズに2-1で勝ったというのに。
この時のチームは、アジアカップ予選のためサウジアラビアとイエメンに遠征した。U-18代表での経験で、海外遠征には慣れていたが、梅崎の夢見心地はまだまだ続いていた。代表用のチャーター機に驚く。サウジでは豪華なホテルの一人部屋に「すげー」と感動した。
そんな感覚は、9月3日の試合後に吹っ飛んだ。
「サウジ戦でエントリー外になったんです。自分と合わせて確か3人くらいがスタンドからの観戦でした。相当悔しかった。絶対に次は試合に出られるように、アピールしようと。オシムさんの練習はビブスが何種類も配られるなど、本当に難解でしたが、そこを理解して、自分の良さを出していこうと」
続くイエメン戦ではメンバー入り出来た。ベンチで肩を組んで君が代を歌った時、「国を背負っているんだな」と武者震いした。ベンチではひたすら「自分が出たら、どう仕掛けるか」をイメージしながら試合を眺めた。
0-0で迎えたアディショナルタイムの91分、オシムに呼ばれた。
「左サイドから中に入るような動きをしてほしい」
そんな指示を受けている間に……先制ゴールが決まった。我那覇和樹が裏のスペースに抜け出し、ゴールにボールが転がり込むようなシュートだった。
「この瞬間、これは自分の交代がなくなるかな、と思いました。リードして守備的な選手を入れ、試合を終わらせるような形にするのかなと。でもそのまま投入されて。オシムさんの指示は『とにかく仕掛けてこい』というざっくりしたものに代わって、ピッチに送り出されました」