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日本代表のニュータイプMF藤田譲瑠チマ20歳… 小学生の頃から光った才能とは「ジョエルは人間が大好き」「景色を変えなさい」
posted2022/08/05 06:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
Kazuhito Yamada/Kaz Photography
ボックスの角付近でパスを受けた藤田譲瑠チマは、ファーストタッチでボールを手懐ける。ヘッドダウンせず、目線はゴールに向けられたままだ。そして、すぐさま右足をスパッと振り抜いた。
ファーサイドの相馬勇紀に届けられたピンポイントのラストパス。ヘディングシュートがニア上を射貫いた。
E-1選手権の韓国戦、49分、このゴールで先制した日本は、佐々木翔、町野修斗が追加点を奪って3-0の勝利。4大会ぶりのタイトルを獲得した。フル代表初招集となった藤田は持ち前のボール奪取力に加え、中盤でゲームを構成し、ゴールに絡む決定的な仕事までやってのけた。
3年前の秋の初陣は「びっくりしました」と語っていたが
藤田譲瑠チマとは何者なのか――。これまで何度も浮かんだ問いは、いまだにはっきりとした像を結ばない。
「プロの試合を映像で見て、自分でもできるんじゃないかと思っていたんですが、実際に当たってみると、強さと速さが全然違った。びっくりしました」と無邪気に話したのが、わずか3年前の秋である。2019年9月14日、J2第32節のアルビレックス新潟戦、当時東京ヴェルディユースの藤田は2種登録選手としてトップデビューを果たしている。
2020年、東京Vでのルーキーイヤーは新型コロナウイルスの猛威が吹き荒れ、第1節終了後に4カ月中断するイレギュラー含みのシーズンとなった。予期せぬブランクの時間を振り返り、藤田はこう語っている。
「自分にとっての価値観、サッカーに対する姿勢を見つめ直す期間になりましたね。サッカーが好きという言葉では足りなくて、自分にとってなくてはならないもの。それでしか存在価値を示せない。サッカーは自分自身なんだと。全体練習が再開されて一歩深くボールに寄せるようになったり、日々のトレーニングですべてを出し尽くそうといった姿勢に変化したように感じます」
「くん付けとか時間の無駄だなと」
甲高い声のコーチングは観客の声援が消えたスタジアムで一際よく響いた。試合を重ねるごとに立ち居振る舞いが堂々とし、気づけば、新人の身ながら誰彼構わずピッチで呼び捨てにしていた。
「(第4節の)大宮戦だったかな。チームが負けていて、僕は後半から入ったんです。そのときはとにかく点が必要で、1秒だって余計なことに使いたくなかった。君付けとか時間の無駄だなと。それをきっかけにシンプルに呼ぶようになりました。プレーが止まったときやピッチの外では呼び捨てにしないですよ」