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成熟し続けるフロンターレが得た、
負けて連覇したという稀有な経験。 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byJ.LEAGUE

posted2018/11/12 17:30

成熟し続けるフロンターレが得た、負けて連覇したという稀有な経験。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

シルバーコレクターぶりを思い出せば、中村憲剛(左)と小林悠は負けての連覇にも感慨深いものがあるだろう。

勇者に微笑んだサッカーの女神。

 同時刻にキックオフしている2位・広島がリードされているという情報を得ているベンチからは、そのまま同点で終えるように指示が飛んでいたとも聞く。だが、ベンチとは逆サイドにいる左サイドの選手たちには伝わり切れていないようで、あくまで攻めにいく姿勢を貫いた。王者である川崎は、勇者でもあった。

 互いに攻め合うスリリングな攻防が続いた最終盤、左サイドでの攻撃の仕掛けから後ろに戻したボールが相手選手の手に当たるハンドに見えたことで、川崎の選手の動きが止まった。しかし村上主審の笛は鳴らず。カウンターを浴びる格好になると、逆サイドからの折り返しを山村和也が合わせると、スライディングタックルに行った守田英正の足に当たって角度が変わり、無情にもゴールネットに吸い込まれた。

 ただサッカーの女神は、勇者に微笑んでくれた。

 同時刻にキックオフしていた広島がベガルタ仙台に0-1で敗れたため、両者の差は7ポイントのまま。残り2試合での逆転は不可能となったため、J1史上5チーム目となる川崎の連覇が決まったのだ。

憲剛も今年は泣かなかった。

 優勝が決まったことを知った選手たちに、去年のような爆発的な歓喜もなければ、涙もなかった。目の前の試合に負けた悔しさが癒されるように、少しずつ喜び始めた光景が印象的だ。そうした姿もひっくるめて、フラッシュインタビューでの中村憲剛は感想を述べた。

「去年は僕自身は15年分の、クラブとしては20何年の積み重ねや思いが等々力ですごく爆発した。今年は泣いてないということは、やっぱり自分たちがそれだけ成熟して、強くなってきたということ。まだまだ足りないところというのも、今日の敗戦で知ったと思う。まだまだ突き詰めていく伸びしろがあると思うので、去年とはまた感じ方が違います」

――成熟して、強くなってきた。

 そんな中村の言葉にあるように、今季の川崎は、自分たちでは崩れない強さがあった。首位・広島に勝ち点差13をつけられたが、同じ方向を向いて戦い続ける覚悟も備えていた。

 なぜ、これだけ安定した戦い方ができたのか。

 1つは、指揮官がぶれなかったからである。鬼木監督は、自分たちがコントロールできない領域には惑わされず、勝ち点3を積み重ねる作業に選手達を集中させ続けた。次第に、選手たちも首位を独走する広島の試合結果に一喜一憂せず、目の前の試合だけにエネルギーを注ぎ続けた。

【次ページ】 上手くいかなくてもぶれずに。

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