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成熟し続けるフロンターレが得た、
負けて連覇したという稀有な経験。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/11/12 17:30
シルバーコレクターぶりを思い出せば、中村憲剛(左)と小林悠は負けての連覇にも感慨深いものがあるだろう。
上手くいかなくてもぶれずに。
「自分の力が及ばないことに対して、『どうしよう?』と考えてもしょうがないですから。広島を負けさせることは、対戦したときにしかできない。やれることは決まっているわけで、自分のチームをどれだけ良くするのか。自分もずっと選手をそういう目でみていますし、選手にもそういう話をよくしていました。自分たちがやれることをやる」(鬼木監督)
ゆるがない指揮官に加えて、選手達に去年の成功体験が加わっていたのも大きかった。結果がついてこないシーズン序盤でも、疑心暗鬼になることはなかったと主力の2人が口をそろえる。
「長いシーズンうまくいかない時期もある。その中で、どうぶれずにやるのかをみんながわかっている。どうやってやっていければ、優勝できるのか。昨年はそれを体現できた。そして、それをやるには1試合1試合勝ち点3を積み重ねるのが大事だとわかっています」(小林悠)
「去年、やるべきことをやって結果が出た。ギリギリだったけど優勝もできた。自分たちがやってきたことを肯定できたし、そういう成功体験がある。今年に関して言えば、その質をあげることで、また近づくことがわかっていた」(中村憲剛)
自分たちから決して崩れない。
川崎は自分たちからは決して崩れなかった。
そして首位・広島の試合結果はコントロールできなくても、直接対決になれば、しっかりと勝った。夏の天王山となった第23節・広島戦。大一番を前にしても、チームは淡々と準備を進めており、特別に何かを言う必要もないほど落ち着いているとキャプテンの小林は自信を持っていたほどだ。
「言わなくてもわかる選手ばかりですね。こういう厳しい試合、大事な試合を勝たないと優勝は見えてこないのはみんなわかっている。みんなを信頼して自信を持ってやりたい」
敵地で先制される展開になったが、まるで慌てなかった。しぶとく同点に追いつくと、終わってみればその小林の2得点でひっくり返し、鮮やかに首位を叩いた。
かつては大一番でデリケートな顔を覗かせるチームだったが、すでにそういう脆さはない。現地で取材していて、川崎フロンターレというチームの成熟ぶりとたくましさをこれほどまでに感じたことは初めてだったほどだ。