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インテルの「運命の男」ベシーノ。
ボールはいつも彼の所に飛んで来る。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byUniphoto PRESS

posted2018/10/25 10:30

インテルの「運命の男」ベシーノ。ボールはいつも彼の所に飛んで来る。<Number Web> photograph by Uniphoto PRESS

マティアス・ベシーノは元来ゴールで評価されるタイプの選手ではない。しかし勝負強さというのは存在するのだ。

終盤の試合を決めるゴールばかり。

 6季目を迎えたセリエAで通算12ゴールを記録しているベシーノは、このところ、その勝負強さを際立たせている。直近の4ゴールを決めた時間は、85分、87分、86分、81分と、すべて終盤だ。

 まだフィオレンティーナでプレーしていた2017年5月28日のペスカーラ戦では、85分にスコアを2-2とする同点ゴールを決めた。インテルに移籍後の同年8月26日のローマ戦では、87分にダメを押すインテルの3点目を決めた。

 2018年1月21日のローマ戦では、86分にスコアを1-1とする同点ゴールを決めた。同年5月20日のラツィオ戦では、前述した通り、81分にスコアを3-2とする決勝ゴールを決めている。ちなみにペスカーラ戦も、ラツィオ戦と同じく、セリエA最終節のシーズンラストマッチだった。

 CLのトッテナム戦を加えると、終盤のゴールは5試合連続となる。

 さらに2018年9月1日のボローニャ戦(セリエAの今季第3節)では、85分のゴールをアシストしている。ミラノダービーの92分のアシストを加えると、ゴールに絡んだ時間はペスカーラ戦の85分から、87分、86分、81分、そして今季のボローニャ戦の85分、トッテナム戦の92分、ミラノダービーの92分まで終盤のそれが非常に多い。

イタリア代表にも誘われたが。

 はたして単なる偶然なのだろうか。

 ベシーノは1991年8月24日に生まれたウルグアイ人だ。ネイマールが大会得点王に輝いた2011年1~2月のU-20南米選手権で頭角を現すと、その夏には国内の名門ナシオナルの一員となり、'13年1月にはイタリアのフィオレンティーナに引き抜かれる。

 セリエAで才能を開花させたのは実質2年目の2014-15シーズン。レンタル先のエンポリでベシーノに全幅の信頼を寄せてくれたのが、現在はチェルシーを率いるマウリツィオ・サッリだった。よほど気に入ったのだろう。サッリは2015年夏にナポリの監督に就任してから、さらに2018年夏にチェルシーの監督に転身してからも、いまだにベシーノの獲得を望み続けているようだ。

 もうひとり、エンポリ時代のベシーノに目をつけていたのが、当時イタリア代表を率いていたアントニオ・コンテだった。イタリアにルーツがあり、イタリアのパスポートも持っている二重国籍のベシーノに、イタリア代表入りを打診したという。

「ウルグアイ代表のためにプレーするチャンスを待ちたい」

 そんな思いを家族には打ち明け、ベシーノは2015年夏にフィオレンティーナに戻ると、2016年3月26日にその夢を叶えている。ウルグアイ代表としての第一歩を踏み出したのだ。2017年夏にインテルに加わると、今年はロシアW杯のエントリーメンバーに選ばれ、ウルグアイが敗退する準々決勝までの5試合すべてに先発出場している。

 2017年夏からインテルを率いるルチアーノ・スパレッティ監督は、主に4-2-3-1システムの中盤の底にベシーノを入れてきた。とはいえ入団1年目のベシーノはシーズン終盤戦に出番を減らし、今夏は換金のための放出すら取り沙汰された。想定された移籍先は、恩師のサッリが待つチェルシーだった。

【次ページ】 「たまたまじゃない、僕らは走れる」

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