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インテルの「運命の男」ベシーノ。
ボールはいつも彼の所に飛んで来る。
posted2018/10/25 10:30
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph by
Uniphoto PRESS
未来を切り開けるフットボーラー。それがインテルのマティアス・ベシーノだ。
「僕のキャリアを通して、もっとも重要なゴールになった」
ベシーノがそう振り返ったのは、昨季のセリエA最終節ラツィオ戦で、未来を切り開くゴールを決めた直後だった。
「僕はゴールを量産できる選手じゃない。だけど、正しい瞬間に、それ(ゴール)はやってくる」
ベシーノが決めた81分のゴールで、常にリードを許していたインテルがラツィオをついに逆転。スコアを3-2としたベシーノのそのゴールが、決勝点となる。
運命を変えるゴールだった。81分のそのゴールが決まらず、試合が2-2のままで引き分けに終わっていたら、インテルの7シーズンぶりとなるCL出場権獲得は実現していなかった。当然、今季のCLグループステージ初戦は迎えることができず、プレミアリーグの強豪トッテナムからの劇的な逆転勝利も収めてはいなかった。
CLを引き寄せ、そして勝ちきる。
トッテナム戦も敗色が濃厚だった。インテルが1点のリードを許したまま、試合の大詰めを迎えていた。4節を終えたセリエAで1勝1分2敗と大きく出遅れ、CLも黒星スタートか――。
そんな嫌なムードを吹き飛ばしたのがベシーノだった。インテルは86分のマウロ・イカルディのゴールで同点に追いつくと、アディショナルタイムの92分に試合を引っ繰り返す。
「これは運命だ。別の誰かが決めていてもおかしくなかった。僕らは全員が(実際は7人が)ペナルティエリアの中にいた。それなのにボールは、僕のところに飛んできた」
トッテナムを逆転する92分の決勝ゴールを決めたベシーノは、大きな殊勲を運命だったと振り返る。コメントはそのまま見出しとなり、ベシーノはメディアから「運命の男」などと囃し立てられた。
トッテナム戦のおよそ1カ月後。10月21日のミラノダービーでも、ベシーノは未来を書き換える。試合は0-0のままアディショナルタイムに突入。残り1分あるか、どうか。そんな土壇場の92分に、イカルディの劇的な決勝ゴールが決まる。右サイドの大外から完璧なクロスを供給したのがベシーノだった。
同じミラノを本拠地とするミランをダービーマッチで破り、トッテナム戦からのインテルの連勝は7に伸びた。アディショナルタイムのベシーノのゴールに始まり、アディショナルタイムのベシーノのアシストで続いている快進撃だ。