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長友佑都、車内から叫んだ15歳の春。
「絶対に革命を起こしてやる!」
text by
占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe
photograph byKyodo News
posted2018/08/12 11:30
ピッチ内外、SNS上でも積極果敢な言動を見せる長友佑都。10代からのサッカー人生が、彼を駆り立てるのかもしれない。
東京五輪、カタールW杯も目指す。
そして、次の役割は……。
'20年東京五輪でのメダル獲得、'22年カタールW杯でのベスト8進出を目指す森保一新監督は、就任会見でこう語った。
「経験を積んだベテランが持っているものを、経験の浅い選手に伝えてもらうことをしてもらう」
所信表明では世代交代を強調しつつも、伝道者を募集。本田、長谷部という精神的支柱が代表を去った今、「ゴリラ」→「キングゴリラ」→「不死ゴリラ」→「スーパーサイヤ人」と進化し、日本人歴代最多タイ記録のW杯11試合出場を誇る長友の経験は欠かせないだろう。
何よりも縦横無尽に駆け抜ける背中には説得力もある。プロ1年目に走法を伝授した土斐崎浩一フィジカルコーチ(現清水エスパルス)も「今の年齢でチーム一動けているのは前後左右に細かくポジションを動かしているからだと思う」と積み上げた経験にうなりながらも、「こっちも負けてられない。佑都に引導を渡す若手を育てますよ」と刺激的なエールを送る。
ロシアでも10年前と変わらず。
決勝トーナメント1回戦・ベルギー戦で華々しく散った後の取材エリアで、長友を呼び止めた。
「よーやった。よー走った」
心の底から出たねぎらいの言葉をかけ、握手した。返ってきた言葉は、やはりルーキーイヤーの10年前と変わらなかった。
「自分にはそれしかできないですから。走ることしかできないから」
15の春に「絶対に革命を起こしてやる」という野望を胸に抱き、故郷を飛び出した。そして、31の夏。ロシア。自らも変革し、どん底から這い上がる革命の旗手を担った。
あれから約1カ月。右手には柔らかくも、力強い意志のこもった最後の握手の感触がまだ残っている――と勝手に思い込んでいる。