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川口能活×楢崎正剛「好敵手として」
レジェンド守護神対談完全版・前編
posted2019/01/06 11:15
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Takuya Sugiyama
2018年12月2日、現役引退セレモニーを終え、ギオンスタジアムを1周する川口能活の姿を見つめる楢崎正剛に声をかけた。あらためて、約4年前の取材のお礼を伝えると、少し照れたような、柔らかい笑顔でこう返された。
「最初で最後でしたもんね」
2015年2月、雑誌では史上初めて、川口と楢崎による対談が実現した。その模様は、Number874号の誌面に掲載したが、ページ数の都合上、掲載しきれなかった会話もたくさん残っていた。
だから、当時からずっと思っていた。
日本を代表する守護神と守護神の対話を、自分のパソコンの中だけに閉じ込めておくのは、あまりにももったいない――。
そこで、おふたりの許可を得て、当時の未公開部分を含む「川口能活・楢崎正剛対談」の完全版を公開することにしました。川口がスパイクを脱ぎ、グローブを外した今、多くのみなさんに、2人の「GKとしての矜持」が伝われば幸いです。
俺たちの関係って、普通だよね。
――雑誌では、初めての対談です。その司会者として正直、緊張しています(笑)。
川口 なんで? 俺たちの関係って、普通だよね。
楢崎 全然普通。むしろ、「なんでこういう対談のオファーが来ないんやろうな」って思ってたぐらいだから。
川口 そうそう。それが不思議だった。
楢崎 メディアのみなさんの方が、気を使っているんでしょ。
――初めて同じチームでプレーしたのは、東京・よみうりランドでのアトランタ五輪予選に向けた強化合宿だったと思います。お互いの第一印象はどうでしたか。
川口 正剛はまだ高校生で、選手権が終わった後の合宿だったよね。
楢崎 そうそう。卒業する前あたり。高校の制服姿で合宿場に行ったんだけど、今でもトレーナーだった並木(磨去光)さんに「制服姿だったあの頃は、可愛かったのに」ってイジられる(笑)。
川口 あの年、正剛は1人で奈良育英を選手権ベスト4に導いて。じつは俺、1回戦で奈良育英と清商(清水商)が戦った試合を観に行ったんだよね。そうしたら、正剛が止めまくって。「これは、清商のシュートは入らないな」と思っていたら、やっぱり奈良育英に1点取られて、0-1で負けて。まさに“神”崎正剛だった(笑)。
楢崎 いやいやいや。その前の年に清商を選手権優勝に導いた“神”口能活さんが、どんだけ偉大だったか(笑)。