サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
日本らしさを表現し尽した90分間。
この敗戦がいつか大きな財産になる。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2018/07/03 11:50
ベルギー戦を終えた日本代表。ロシアの地での4試合は、かけがえのない財産となった。
デブライネから右へ、そしてシャドリが……。
果たして、ここから試合はベルギーのものとなっていく。4分後にフェライニがヘディングシュートを突き刺し、日本はアドバンテージを失った。
80分、西野監督が動く。後半途中から活動量の落ちた柴崎が退き、山口蛍が登場する。同じタイミングで原口も下がり、本田圭佑が起用された。
フレッシュな選手を投入しても、ベルギーの猛攻を止められない。85分にはシャドリとルカクに決定的なヘッドを浴びるが、川島の好セーブでなんとかしのぐ。
日本にチャンスが訪れたのは、4分の追加タイムが半分を過ぎたあたりだった。この日も無敵のポストワークを見せてきた大迫勇也が、ゴール正面30m強の位置で反則を誘う。直接FKのボールをセットするのは本田だ。左足から放たれたシュートはゴール左スミを鋭くとらえるが、GKティボー・クルトワのセーブにあった。
それでもまだ、CKがある。
しかし、本田の左CKはクルトワにキャッチされ、ベルギーが逆襲に出る。クルトワからボールを受けたケビン・デブライネに呼応して、赤いユニフォームが日本陣内へなだれ込んでくる。日本は戻り切れない。デブライネから右サイドのトマ・ムニエへパスがわたり、ゴール前へグラウンダーのパスが通る。ルカクがスルーした背後から、フリーのシャドリが飛び込み──。
「本気のベルギーに対抗できなかった」
セネガル人の主審は、日本のキックオフで試合を再開した。ほとんど間をおかずに、長いホイッスルがピッチに鳴り響いた。
青いユニフォームが、銃弾を浴びたかのように崩れ落ちた。
「いまのチーム力ならかなり抵抗できるのではと考えていたなかで、自分たちで最高の流れをつかんだ。ただそこで、ベルギーが本気になってしまった。試合前のミーティングで、ベルギーを本気にさせたいという話はしていた。我々がフルパワーでいかないと本気を引き出せないと考えていたが、残り30分は本気のベルギーに対抗できなかった」
試合後の記者会見に臨んだ西野監督は、いつもとさほど変わらない声のトーンで話した。それが逆に、抑えきれない悔しさを引き立たせていた。