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西野朗監督に今一番大事なこととは?
トルシエが伝えた最後のアドバイス。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byMutsu Kawamori/AFLO
posted2018/05/23 11:30
4月29日、リーガ・エスパニョーラのヘタフェを視察した時の西野朗・日本代表監督。東奔西走……短い時間ながら出来うる限り多くの選手を見て回っている。
「日本人に適したプレーではなかったと思う」
――あなたは自信の回復にはメンタル面の準備が重要であると言いましたが。
「その通りで、メンタルがすべてと言ってもいい。
そういう意味では、ヴァイッドはサッカーの偉大な哲学者ではなかった。ヴァイッドがこれまで何らかのサッカー哲学を構築したとは言えないと思う。彼は哲学を構築するタイプではなく、選手を使ってヨーロッパのサッカーに対抗できるチームを作る術を心得た、非常に現実的な監督だ。
彼は日本人選手にどう守ったらいいか、どうしたら戦いに勝てるか、縦に速い攻撃はどうすれば仕掛けられるかを教えられる監督だ。
ヴァイッドはそうした独自のアイディアを携えて日本にやって来た。そして多くの日本人選手たちが彼の哲学とは相容れないことに気がついた。
それでも彼は、日本人にフランス人やクロアチア人、アルジェリア人と同じプレーをさせようとしたのだ。日本に適応した哲学を彼は実践しようとはしなかった。結局……3年にわたり彼が実践してきたのは、日本人に適したプレーではなかったと思う」
「日本がこれから持ちうるのはメンタルの強さだけ」
「現実的な話をすると、ワールドカップ本番において、日本に多くの武器があるとは思えない。
日本がこれから持ちうるのはメンタルの強さだけだ。
メンタルを強くして、自分たちの価値観に基づいてプレーする。コレクティブな面が欠如しているのは致し方ない。つまり日本が優れたパフォーマンスを発揮するのは、選手が個の力を発揮したときだけということだ。
選手のコンディションが良く個々のプレーが素晴らしければ、チームのパフォーマンスも素晴らしくなる。しかし準備が不完全で選手が疲労していたら、チームも決していい状態にはならない。残念ながらその点について西野監督は何も変えることができない。
彼が武器にできる唯一のものがあるとしたら、それはメンタルだ。
チームをひとつにして戦えるかどうかだ」