Jをめぐる冒険BACK NUMBER
仲介人、社長、実況アナウンサー。
西岡明彦の24時間365日サッカー人生。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2018/04/20 10:30
元広島・森崎浩司のユニフォームの前で笑顔を見せる西岡明彦氏。彼もまたサッカー界に不可欠な存在だ。
川勝さん、戸田くん……タイプはそれぞれ。
解説者へさりげないパスを出すために、そのタイプの見極めに抜かりはない。
「川勝(良一)さんなら、監督のキャリアが長いので、監督目線というか、チームの全体像を見ていたり、勝負に対するコメントが多い。一方、(水沼)貴史さんや戸田(和幸)くんとかは、プレーヤー目線であったり、選手一人ひとりの特徴を捉えるのが上手いので、そうしたコメントを話しやすいようにしています」
西岡と数え切れないほど仕事をしてきた「J SPORTS」のプロデューサー・土屋雅史は「西岡さんは基本に忠実で、クセがない。とてもオーソドックスな実況だと思います。だからこそ西岡さんの実況は心地よく、耳に入ってくるんだと思いますが、実はそれって一番難しいこと」と分析する。
西岡は試合中20秒くらい、あえて黙るときがある。それは、視聴者に目の前で起きていることを楽しんでもらいたかったり、余韻を感じてほしかったり、解説者の言葉を待っていたりと、意図があるのだが、「実況者が20秒も黙るってなかなかできない。普通は間が怖くて喋ってしまうものだから」と土屋は言う。
彼らの苦労も分かるから、表現したい。
西岡がそれをできるのは、サッカーをよく知っているからではあるが、根底に、サッカーそのものを楽しませたいという気持ちと、自分は根っからの喋り手ではないという達観があり、良い意味で力が抜けているからかもしれない。
「僕はサッカーに魅せられてここまで来たので、その素晴らしさを伝えていきたいんです。選手の魅力だけでなく、チームとしての魅力、サッカーというスポーツとしての魅力。選手や監督とも個人的な付き合いがあるので、彼らの苦労も分かっている。そういったものも、表現していきたいですね」
おそらく西岡は今週末もスタジオに入り、モニターの前に座って解説者と巧みに掛け合いを交わしながら、サッカーを届けていることだろう。だが、それは彼の一面でしかない。
いかに24時間、365日サッカーのことだけで生きるか――。
本当の西岡は、そのスタンスを貫いている。サッカーファンが思う以上に、彼はサッカー大好き人間なのだ。